幼なじみの恋と恋愛小説の恋。
11話 美羽と翔のお母さん
翌日、学校に行った。春花ちゃんとも話して来た。
学校では、噂は広まったままだった。
また、『優芽ちゃんと翔は付き合っている』と言う噂も流れていた。
あまり放置しておくと優芽ちゃんと翔が危ないから、私は噂に圧を掛けておいた。
「噂は噂だから真に受けないで」
…みたいなことを言った。内心は怖かった…けど見せないように。
今日は、翔は休み時間、席に居なかった。
今日の夕方は、
冬の寒い中コートを着て白い息を吐きながら近くの翔の家に行く。
翔の家に着き、インターホンを鳴らすと、
翔の、とても綺麗なお母さんが嬉しそうに私を迎えてくれた。
「美羽ちゃん〜!いらっしゃい。翔と約束かしら?」
「は、はい…そんなところ、です。翔は居ますか?」
下を向いて話してしまったけど、
翔のお母さんは気にした様子もなく、答えてくれた。
「翔なら、自分の部屋に閉じこもってるわ。小学6年生に入った頃からだけど、最近は酷くなってるからちょっと心配で…」
お母さんは心配そうに眉を下げていた。そんなところは翔によく似ている。
「…私が見に行ってもいいでしょうか?」
「勿論よ!美羽ちゃんなら、きっと話してくれるわよ〜」
…そういえば、最近は私から翔を避けていたけど、
翔の気持ちはどうだったのだろう…
翔の気持ちを考えていなかった私が入ってもいいの?
入る事を躊躇ってしまっていると、
翔のお母さんが、優しく声を掛けてくれた…
「翔はきっと美羽ちゃんの事が好き。だってあんなに楽しそうに美羽ちゃんの事を今でも話すもの〜」
「?そう、なんですね。私は避けていたつもり、だったのですが…」
「そうね〜、『なんか避けられてる…』って眉をハの字にして言ってはいたけど寂しいだけよ〜」
翔のお母さんが翔の真似をして指で眉を下げ、
眉をハの字にする。
その表情の翔がすぐに想像できて、それをやっている翔のお母さんも翔も可愛くて…
「ふふっ…!そうなんですね…!」
「そうなのよ〜!美羽ちゃんもやっぱり翔の事大好きね。」
「あ…。」
私は翔の事でも、笑えた。好き…なのかな。
「翔のお嫁さんになってくれないかしらね…」
「はっ?!?」
「あら真っ赤、可愛い。いつでも大歓迎よ!」
翔のお嫁さん…いいかも知れない。
なんて…なんでこんな事を考えているの私?!
「し、失礼します…」
「どうぞ、気をつけてね〜」
とても恥ずかしかしくて、
…話を切り上げるように、私は翔の部屋へ向かった…