幼なじみの恋と恋愛小説の恋。

16話 信じる

 俺は、翔は、今困っていた。

 「〜〜〜♪」

 優芽が、座っている俺の腰に引っ付いて鼻歌をうたっている。

 …頭を撫でると手に擦り寄って「もっとして」と催促(さいそく)する。

 さっき、
 優芽が自分を傷つけようとしたナイフを手のひらで受け止めて、血は沢山出て痛かったけど…

 少し落ち着いて来た優芽がベッドの布で止血してくれた。

 それからは縋る様に、引っ付いている。

 「どうしよう…」
 
  俺の大好きな人は美羽だけ。
 だけど、優芽も放っておけない。

 
  その気持ちを汲み取ったのか、優芽は

  「3人で結婚しよ〜♪」

 「……まじか。」

  3人で結婚したら、世の中の男子に恨まれそう…

 その常識さえ壊せばいいんだろうけど。
  恨まれるのは、変わらなさそう…

 「翔くん、本当に、ありがとう…」
 「美羽ちゃん達、受け入れてくれるかな…?」
 
 
  近くにいたから、信じられる。
 「きっと、大丈夫だよ。」
 

 「翔くんの事は信じてるからね!」


 「じゃあ、大丈夫だ。」
  きっと美羽達の事も信じられる。
 

 「これからどうするの…?」
 優芽は不安そうに聞く。
 
 
  何かされるか不安なのかもしれない。


 …今更だけど美羽、俺の両親に優芽のこと、優芽に言わず全部話していた気がする。大丈夫か…?


 「普通に明日から学校に行く。学校は嫌か…?」

 「…大丈夫かな?」

 「うん。噂は遊びみたいなものだし、
 …美羽と春花とは直ぐに仲直りできるよ。」

 「わぁい〜!翔くんと一緒に行くね〜!」


  「そっちの方が心配だぁ…」
 引っ付いてくる…冷たい目で見られる…
 将来に関わる…


  「……?」
 優芽は不思議そうだった…

 「いいよ。いつでもおいで…」
 
 「大好き〜!」
 
  優芽が俺の腰に回した腕に力を込める。
 しょうがないなぁ…。

 
  ただ、よかった。そう思った。
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