幼なじみの恋と恋愛小説の恋。

8話 嫉妬心

  美羽達が校舎裏へ来ようと廊下を走っている時、
 翔は夜月優芽(やづき ゆうめ)に校舎裏へ呼び出されていた。
 
 「…どうしたんだ。こんなところに呼び出して…」

 最近、俺と美羽と、関わる感じの噂を聞いた。
 
 目の前の…優芽が言い出した、とも。
 …困る。
 俺は昔、色々やらかして、美羽とまだ
  ぎくしゃくしてるのに…
 
 「……また、美羽ちゃんのことを考えてる。」

 「…今はかんがえてないし!?」

 驚いて声が半分裏返る。
 だが、相手は容赦なく続ける。

 「別にいいよね…?半分くらい本当でしょ?」

 「だからって……」
 

 「美羽が桐島優希くんに告白された。」

 「どうせ……罰ゲームかなにか、だろ。」

 「そうだね。罰ゲームとは聞いたけどね。私が嘘をついているかも。」

 「どうして優芽の為にもならない事をした?」

 
 「翔君が振り向いてくれないからだよ!!?」

 …優芽の声には、どこか冷たいものが混じっていた。それがただの嫉妬心から来るものなのか、
  それとも孤独を感じているのか、翔には分からなかった。

 「………」

 「今も、きっと美羽ちゃんのことも考えてる。
 でもこうしたら私のことも少しは見てくれるよね。」

 …優芽や美羽の事を考えると頭が痛い。

 「あぁ…後、私と付き合ってるって噂も流すよ。」

 「俺も嫌われるんだが…」
 俺は反論するが、どちらかというと美羽の事を考えていた。

 「どうせ、美羽ちゃんのことばかり考えてる。」
 ……俺があの日のことを、思い出すからだ。

 「……優芽も…そんなことばかりしていると、人を信頼できなくなるぞ?」

 「いいの…これが、私なりに考えた、自分が満足できる方法だから。」

 俺は、何も言わずに目を伏せた。
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