ありふれたわたしは見る花を探す
「今日は付き合ってもらっちゃってごめんね〜?亜雄ちゃん」
家でたっぷり遊んだ後、亜雄ちゃんを送る帰り道、わたしは肩を組み彼女に話しかける。
「許さないことはなきにしもあらずという訳ではないわ」
「え、いや、つまり?え、どっち?」
「…ふ」
「いや、誰の台詞やねん!」
「エセ関西弁、きしょいですわよ」
「わー、ざー、と!ですわよぉ」
「く、変顔のレパートリーすごいわ。負けた」
「おめー、舐めてんのか」
「許してって、」
「こうしてやる!」
つやつやつや!
わたしは触れるか触れないかぐらいの距離で、おまけにすごい速度で亜雄ちゃんの髪を撫でた。
一瞬で天使の輪が出来上がる。
悔しいけど、さすがだ…。
「…ありがとう」
「…どういたしまして、次は逆方向からなでようか!」
「無理」
「無理!?」
ひゃひゃひゃひゃと笑った。
その時、ピンク色の上着を乱れさせ、白っぽいワンピースを着た女の子が体力も気力も絶え絶えという様子でゆっくり走ってきた。
「大丈夫かな…」
「どうしたのかしら」
しかし、すれちがうことなく、手前のグレーのアパートのフロントに入っていく。
あのアパートには亜雄ちゃんが住んでいる。
「知らない子だ、あの子、もしかして逃げてるんじゃない」
「え?あの子、亜雄ちゃんのアパートの子じゃないの?」
素っ頓狂な声が出た。
「行ってくるわ」
「わ、私も!」
何かあったのかも知れない。
例えば、犯罪とか…
肝を冷やしながら心臓を高鳴らせながらフロントに行く。
「っ!」
その子は内側に座り込んでいて、くたびれている様子だ。
「あの、どこか怪我はしていませんか?」
「へ?あ、すみません、大丈夫なので」
早口にそう言うと、立ち上がり、硬直した。
「ああ、すみません、なにかから逃げてるように見えたので、警察とか呼びます?」
本当に怪我はしていないみたいだけど、あまりにも心配で提案する。
「あ、ああ!わ、わあ、すみません、大丈夫です」
「あ、ほんとですか、あの、いつでも声かけてくださいね」
「あ、はい、あの、ここに住んでいる方、ですか?」
「あたしはそうです」
「は、初めまして、ここの207号室に今日からしばらくお世話になる、田中、と申します」
「あ、そうなんですね。よろしくお願いします、406の佐賀亜雄です」
まさかの、入居者だったとは。焦っているみたいだったけど、色々あったんだろうな。
2人が話し始めるのを聞き、そろそろ戻っても大丈夫そうかもな、と思いかける。
「亜雄ちゃん、わたし、帰るわ!また!」
「ええ、ありがとう、また明日」
笑顔で手を振ると、田中さんにもそれじゃあ、と笑顔を向け、家路についた。
ああ、今日はいろんなことかあった。
これからも、これまでも。
こうして毎日が続けばいいのに、どうしてそうはいかないんだろう。
「あー、なんかお腹減ったんだよなぁ」
もう午後10時半は過ぎた頃。
ふと、コンビニアイスが食べたくなって、自転車に乗る。家族にも希望を募り、受け付けた、イモクリームどら焼きに、がりがりヨーグルト、ソフトクリーム、わたしはどれにしようかな、サラダチキンもいいよなぁ。
よだれが垂れそうだったので、早めに向かう。
「あれ?」
ふと、丁度亜雄ちゃんのアパートが見えるところに差し当たったとき、アパートの廊下にミスマッチな姿が見える気がする。
うーん、あれは誰だろう。
一瞬亜雄ちゃんに見えたので、どうしたのかと思ったら、髪の長いガタイのいい男の人もいるようなので、それは違うな、と思った。亜雄ちゃんの家は母子家庭だ。
近づくと、色はぼんやりとしているが、顔かたちはわかった。
1人は、絶対洸陽。あと1人は…わからなかった。
一瞬で通り過ぎてしまった。
もう自分から漕ぐことはせず、しばらく勢いに任せる。
誰だろう。あのアパートに、なぜか長髪の洸陽が会いに行った子は。
彼女?そんな訳ない、と言えないことに気づく。
当たり前か。活動する世界が違うのだから、いろいろあるんだろう。
せいぜい、刺されなければいい。
わたしが、心配していいのはわたしが知っている範囲のことだけで、彼の行く先は、彼の世界の者しか知らないのだ。
これも、当たり前だな。
そんなことをなぞって、わたしは何がしたかったんだろうか。
「あー、した」
わたしの耳が悪いのか、別の言葉を言っていたのか、、
いや、店員さんが眠かったんだろう。
とてもゆるゆるの挨拶。
店内から出ると、しばらく外の一面の闇に目が慣れなかった。
すぐに、コンビニの看板や信号が見えるようになった。
心はなにかが引っ掛かっていた。
そうだ。アパートの子だ。あの時、逃げ込んできた、あの子。
アパートで洸陽と一緒にいた子だ…。
そういえば、服とか、髪型も同じだった気がする。
なにかが、狂ったような、そんな気がしなくもなくも、ない。
家でたっぷり遊んだ後、亜雄ちゃんを送る帰り道、わたしは肩を組み彼女に話しかける。
「許さないことはなきにしもあらずという訳ではないわ」
「え、いや、つまり?え、どっち?」
「…ふ」
「いや、誰の台詞やねん!」
「エセ関西弁、きしょいですわよ」
「わー、ざー、と!ですわよぉ」
「く、変顔のレパートリーすごいわ。負けた」
「おめー、舐めてんのか」
「許してって、」
「こうしてやる!」
つやつやつや!
わたしは触れるか触れないかぐらいの距離で、おまけにすごい速度で亜雄ちゃんの髪を撫でた。
一瞬で天使の輪が出来上がる。
悔しいけど、さすがだ…。
「…ありがとう」
「…どういたしまして、次は逆方向からなでようか!」
「無理」
「無理!?」
ひゃひゃひゃひゃと笑った。
その時、ピンク色の上着を乱れさせ、白っぽいワンピースを着た女の子が体力も気力も絶え絶えという様子でゆっくり走ってきた。
「大丈夫かな…」
「どうしたのかしら」
しかし、すれちがうことなく、手前のグレーのアパートのフロントに入っていく。
あのアパートには亜雄ちゃんが住んでいる。
「知らない子だ、あの子、もしかして逃げてるんじゃない」
「え?あの子、亜雄ちゃんのアパートの子じゃないの?」
素っ頓狂な声が出た。
「行ってくるわ」
「わ、私も!」
何かあったのかも知れない。
例えば、犯罪とか…
肝を冷やしながら心臓を高鳴らせながらフロントに行く。
「っ!」
その子は内側に座り込んでいて、くたびれている様子だ。
「あの、どこか怪我はしていませんか?」
「へ?あ、すみません、大丈夫なので」
早口にそう言うと、立ち上がり、硬直した。
「ああ、すみません、なにかから逃げてるように見えたので、警察とか呼びます?」
本当に怪我はしていないみたいだけど、あまりにも心配で提案する。
「あ、ああ!わ、わあ、すみません、大丈夫です」
「あ、ほんとですか、あの、いつでも声かけてくださいね」
「あ、はい、あの、ここに住んでいる方、ですか?」
「あたしはそうです」
「は、初めまして、ここの207号室に今日からしばらくお世話になる、田中、と申します」
「あ、そうなんですね。よろしくお願いします、406の佐賀亜雄です」
まさかの、入居者だったとは。焦っているみたいだったけど、色々あったんだろうな。
2人が話し始めるのを聞き、そろそろ戻っても大丈夫そうかもな、と思いかける。
「亜雄ちゃん、わたし、帰るわ!また!」
「ええ、ありがとう、また明日」
笑顔で手を振ると、田中さんにもそれじゃあ、と笑顔を向け、家路についた。
ああ、今日はいろんなことかあった。
これからも、これまでも。
こうして毎日が続けばいいのに、どうしてそうはいかないんだろう。
「あー、なんかお腹減ったんだよなぁ」
もう午後10時半は過ぎた頃。
ふと、コンビニアイスが食べたくなって、自転車に乗る。家族にも希望を募り、受け付けた、イモクリームどら焼きに、がりがりヨーグルト、ソフトクリーム、わたしはどれにしようかな、サラダチキンもいいよなぁ。
よだれが垂れそうだったので、早めに向かう。
「あれ?」
ふと、丁度亜雄ちゃんのアパートが見えるところに差し当たったとき、アパートの廊下にミスマッチな姿が見える気がする。
うーん、あれは誰だろう。
一瞬亜雄ちゃんに見えたので、どうしたのかと思ったら、髪の長いガタイのいい男の人もいるようなので、それは違うな、と思った。亜雄ちゃんの家は母子家庭だ。
近づくと、色はぼんやりとしているが、顔かたちはわかった。
1人は、絶対洸陽。あと1人は…わからなかった。
一瞬で通り過ぎてしまった。
もう自分から漕ぐことはせず、しばらく勢いに任せる。
誰だろう。あのアパートに、なぜか長髪の洸陽が会いに行った子は。
彼女?そんな訳ない、と言えないことに気づく。
当たり前か。活動する世界が違うのだから、いろいろあるんだろう。
せいぜい、刺されなければいい。
わたしが、心配していいのはわたしが知っている範囲のことだけで、彼の行く先は、彼の世界の者しか知らないのだ。
これも、当たり前だな。
そんなことをなぞって、わたしは何がしたかったんだろうか。
「あー、した」
わたしの耳が悪いのか、別の言葉を言っていたのか、、
いや、店員さんが眠かったんだろう。
とてもゆるゆるの挨拶。
店内から出ると、しばらく外の一面の闇に目が慣れなかった。
すぐに、コンビニの看板や信号が見えるようになった。
心はなにかが引っ掛かっていた。
そうだ。アパートの子だ。あの時、逃げ込んできた、あの子。
アパートで洸陽と一緒にいた子だ…。
そういえば、服とか、髪型も同じだった気がする。
なにかが、狂ったような、そんな気がしなくもなくも、ない。