ありふれたわたしは見る花を探す
やっと着いた…
無事我が家に着いて安心し、自然と何もないキッチンに移動する。
自分で借りた、1LDKの、新居。
嬉しいなぁ。
バイトにバイトを重ねてようやく貯まった、貴重なお金。
節約また頑張ろう…
1人きりの部屋で、白い息を吐く。
しばらく白いかたまりは漂っていて、くすっと笑った。

ピンポーン。まぬけな音が鳴って、なんだろう、と不思議に思う。
もう一度、ピンポーン、という音が鳴り、あっ、そうだこの音で私は出なくちゃいけないんだった、と理解する。

「はい」
「満端ガスの清見と申します。ガスの使用のための点火確認及びガス器具の点検に参りました。お間違いないでしょうか」

そ、そうだった…!
「はい、今出ます」


そこからバタバタと業者の方に見てもらい、無事ガスが灯るようになると、ひと段落した。

これから、夜ご飯のために、河川敷に行って食べられそうな食材を採取してこようかな。

待っていてね、私の食材たち…!
結んでいた髪を降ろし、ピンクのカーディガンを羽織ると、近所の河原に向かった。


しかし、歩き続けても川が見えない。
なんだか人ともすれ違わないし、余計淋しさが募る。
正しい道はあらかじめ確認していたのに、通行止めがたくさんあって、大幅に遠回りしてしまった。
なんとなく、歩いていたら閉ざされた空間の芝生の広場に出てしまった。
うーん…しかも冬は体にこたえる。
少し休んでから、行こう…
そう考えると、芝生に横たわると、しばらく空を見つめていたけれど、いつのまにか眠気でいっぱいになっていて、意識は混濁としていき、しまいにはブラックアウトした。

なぁ、…大丈夫か!
そんな声も、全く聞こえず、起きたのはすっかり夕方になってからだった。

あ、起きた!

へえっ!?  
すみません、失礼しました!

申し訳ありません、とか謝罪の言葉が口の中でどもる。

ああ、とにかく速やかに去らなくちゃいけない所だったなんて…

私は走って逃げ出しつつ、もう二度と不用心に外ので寝ないようにしよう、と心を決めた。

結局、夜ご飯は見つけられず、他の所を探すため、一度家に戻ったところ、綺麗な女の子たちに心配された挙句、丁寧に挨拶まで貰った。

優しくされてとても嬉しかった。
しかし、それでお腹は膨れないのが現実で、手を出したくはなかったけれど、このアパートの駐車場に生えている植物を食べようかな。

ふと、思いつく。
今の時間、スーパーで試食をやってるかもしれない…。

そうだ、そこに行こう、徒歩五分だから…。

スマイルスーパーマーケット、と書かれた小さめの商店に着くと、自動ドアから出てきたおばさんたちがわらわらと出てきた。
外よりもきんとした冷気が店内から押し寄せてきて、身震いする。

私の憶測は当たっているといいんだけど…とコンビニ二つ分くらいの店内に入った。

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