いい夫婦の日
2024年11月15日になる。
40代後半になっているが、そもそも、いつも彼女がいないと言って、悶々としているのが、アキヒコだ。
アキヒコは、もう40代後半になっているが、未だに、恋愛なんて上手く行かないことが、多い。そして、何度か、好きになった女性と交際し、デートをしても、他の男性に奪われたことがあった。
アキヒコは、ちなみに、出版社の編集者をしたり、ライターをしている。
この間は、ケーブルテレビニコニコにテレビ出演をした。
爽やか出版社の宣伝に。
「藤坂君は、嵐の二宮和也君に似ているから良いよ、顔が」
と言われた。
確かに、顔だけは、嵐の二宮和也に似ていると言われる。
ああ、もう来週は、いい夫婦の日か、と思った。テレビカメラの前で思った。
仕事を終えて、職場を後にした。
そして、11月になると寒さはこたえる。
コートを羽織って、そのまま、京急品川駅に向かった。昨日、たまたま、映画『植物図鑑』を観たら、何故か、涙がホロホロ出てきた。男なのに、女性の見る恋愛映画で涙が出た。本当は、女優の高畑充希さんが、好みだったからだ。
京急品川駅から、アキヒコは、横浜駅まで帰る。
アキヒコは、京急横浜駅まで電車で帰る。
プラットフォームに、発着メロディーが、流れた。
赤い電車が、サイレンを鳴らして、品川駅の構内に入ってきた。
ー快特三崎口行きが、参ります。
ー危険ですから、前の方は、白線の内側までお下がりください
とアナウンスが、流れた。
アキヒコは、ぼっとしていた。
スマホで、株価指数が、気になって検索していた。
その時だった。
後ろに下がっていたら、
ードンっ
と音がした。
ーペチャ
と液体の音がした。
ーネチャ
ともした。
「ごめんなさい」
とショートカットの小柄な女性が頭を下げた。
あろうことか、彼女は、この寒い中、ソフトクリームを食べていた。
コートに、白色のソフトクリームで、背中が汚れた。
アキヒコは、困った。
「ごめんなさい」
と彼女は、頭を下げていた。
アキヒコは、思った。
怒ろうか。どうしようか。
ただ、ここ何年と、アキヒコは、女性から「ごめんなさい」と言われておらず、また、寂しかった。
そして、目の前の彼女は、美人だった。
「いや、もう、いいよ」
「いや、いくら何でも」
「いや、いいですよ、電車で、20分もしたら、着くので」
アキヒコは、列から離れて、言った。
周りの乗客は、みんな、早く電車に乗り込んでいた。
「まあ、汚したのは、仕方ないさ」
「はい」
「でも、今度から、食べ歩きだけは、する時、気をつけなさい」
とアキヒコは、言った。
アキヒコは、コートを、脱いで「もう駄目だよ」と言って、彼女に名前も聞かず、次の特急三崎口行きに乗った。
アキヒコは、「しまった、名前だけでも聞けばよかったか」と悔やんだ。
ー本当は、こんな時、スマホで「LINE交換しよう」と言えばよかった
ーいや、因縁吹っ掛けるようで嫌だな
とか、色んなことを考えていた。
映画『植物図鑑』ならば、サヤカが、仕事帰り、行き倒れているイツキに、「部屋泊って良いよ」とか言ったなぁと思った。
一人で妄想していた。
車内は、こんでいたが、アキヒコは、コートを畳んで、薄着で横浜まで帰った。
京急横浜駅からバスで少し行ったところのハイツに住んでいる。
部屋に着いて、唐揚げを作った。
アキヒコは、料理は結構、得意だ。
そして、部屋の片付けもしている。
だから、部屋はすっきりしている。
だが、最近、部屋を片付けたり、料理をしても、「一人って、寂しい」と感じる。日本では、孤独死が、多くなると聞いた。
知り合いが、ガンで亡くなった。
その知り合いが、亡くなった時、友人も家族もいなかったと聞いた。
そんな最後、少し、寂しいとアキヒコは、思った。
出版社の仕事だって、テレビの仕事だって、昔の時代と違って、今は、厳しい。今、「出版社の仕事をしている」と言っても、雑誌や本の売れ行きは、頑張っても厳しいし、給料だって安い。
アキヒコは、若い時、歌手をしていたが、厳しく、そして、雑誌で、音楽のコラムを書いていたら、今の会社が拾ってくれた。しかし、歌手をしていた時代が、ほとんど、インディーズで、CDも販売したが、今では、もう、ネットの中で、自分の中古のCDが、細々とオークションで「3円」で売られていた。
それを、ネットで観た時、寂しかった。
アキヒコは、ファンの女性が、色んな事をして、よく怒っていた。お酒の席で酔って吐いた女性ファンに怒ったのが良くなかったと思う。吐いたものは、臭くてたまらないが、それがないと何だか、今、綺麗に片付ている部屋は、どこか寂しいと思っている。
それから、一週間が経った。
2024年11月21日。
アキヒコは、いつものように出勤した。
「えー、今日から仕事をすることになる人を紹介します」
と上司は、言った。
「フジムラミツキ君」と言った。
その時、「はい」と声をあげて、部屋に入ってきた女性は、京急品川駅で、ソフトクリームで、アキヒコのコートを汚した女性だった。
ミツキも、一瞬、アキヒコを凝視していた。
その日は、アキヒコもミツキも、びっくりしていた。
それから、暫くして。アキヒコは、。ミツキと食事へ行ったらしい。
世間では、いい夫婦の日に一緒に共演をしていた高畑充希と岡田将生が、本当に夫婦になったらしい。<完>
40代後半になっているが、そもそも、いつも彼女がいないと言って、悶々としているのが、アキヒコだ。
アキヒコは、もう40代後半になっているが、未だに、恋愛なんて上手く行かないことが、多い。そして、何度か、好きになった女性と交際し、デートをしても、他の男性に奪われたことがあった。
アキヒコは、ちなみに、出版社の編集者をしたり、ライターをしている。
この間は、ケーブルテレビニコニコにテレビ出演をした。
爽やか出版社の宣伝に。
「藤坂君は、嵐の二宮和也君に似ているから良いよ、顔が」
と言われた。
確かに、顔だけは、嵐の二宮和也に似ていると言われる。
ああ、もう来週は、いい夫婦の日か、と思った。テレビカメラの前で思った。
仕事を終えて、職場を後にした。
そして、11月になると寒さはこたえる。
コートを羽織って、そのまま、京急品川駅に向かった。昨日、たまたま、映画『植物図鑑』を観たら、何故か、涙がホロホロ出てきた。男なのに、女性の見る恋愛映画で涙が出た。本当は、女優の高畑充希さんが、好みだったからだ。
京急品川駅から、アキヒコは、横浜駅まで帰る。
アキヒコは、京急横浜駅まで電車で帰る。
プラットフォームに、発着メロディーが、流れた。
赤い電車が、サイレンを鳴らして、品川駅の構内に入ってきた。
ー快特三崎口行きが、参ります。
ー危険ですから、前の方は、白線の内側までお下がりください
とアナウンスが、流れた。
アキヒコは、ぼっとしていた。
スマホで、株価指数が、気になって検索していた。
その時だった。
後ろに下がっていたら、
ードンっ
と音がした。
ーペチャ
と液体の音がした。
ーネチャ
ともした。
「ごめんなさい」
とショートカットの小柄な女性が頭を下げた。
あろうことか、彼女は、この寒い中、ソフトクリームを食べていた。
コートに、白色のソフトクリームで、背中が汚れた。
アキヒコは、困った。
「ごめんなさい」
と彼女は、頭を下げていた。
アキヒコは、思った。
怒ろうか。どうしようか。
ただ、ここ何年と、アキヒコは、女性から「ごめんなさい」と言われておらず、また、寂しかった。
そして、目の前の彼女は、美人だった。
「いや、もう、いいよ」
「いや、いくら何でも」
「いや、いいですよ、電車で、20分もしたら、着くので」
アキヒコは、列から離れて、言った。
周りの乗客は、みんな、早く電車に乗り込んでいた。
「まあ、汚したのは、仕方ないさ」
「はい」
「でも、今度から、食べ歩きだけは、する時、気をつけなさい」
とアキヒコは、言った。
アキヒコは、コートを、脱いで「もう駄目だよ」と言って、彼女に名前も聞かず、次の特急三崎口行きに乗った。
アキヒコは、「しまった、名前だけでも聞けばよかったか」と悔やんだ。
ー本当は、こんな時、スマホで「LINE交換しよう」と言えばよかった
ーいや、因縁吹っ掛けるようで嫌だな
とか、色んなことを考えていた。
映画『植物図鑑』ならば、サヤカが、仕事帰り、行き倒れているイツキに、「部屋泊って良いよ」とか言ったなぁと思った。
一人で妄想していた。
車内は、こんでいたが、アキヒコは、コートを畳んで、薄着で横浜まで帰った。
京急横浜駅からバスで少し行ったところのハイツに住んでいる。
部屋に着いて、唐揚げを作った。
アキヒコは、料理は結構、得意だ。
そして、部屋の片付けもしている。
だから、部屋はすっきりしている。
だが、最近、部屋を片付けたり、料理をしても、「一人って、寂しい」と感じる。日本では、孤独死が、多くなると聞いた。
知り合いが、ガンで亡くなった。
その知り合いが、亡くなった時、友人も家族もいなかったと聞いた。
そんな最後、少し、寂しいとアキヒコは、思った。
出版社の仕事だって、テレビの仕事だって、昔の時代と違って、今は、厳しい。今、「出版社の仕事をしている」と言っても、雑誌や本の売れ行きは、頑張っても厳しいし、給料だって安い。
アキヒコは、若い時、歌手をしていたが、厳しく、そして、雑誌で、音楽のコラムを書いていたら、今の会社が拾ってくれた。しかし、歌手をしていた時代が、ほとんど、インディーズで、CDも販売したが、今では、もう、ネットの中で、自分の中古のCDが、細々とオークションで「3円」で売られていた。
それを、ネットで観た時、寂しかった。
アキヒコは、ファンの女性が、色んな事をして、よく怒っていた。お酒の席で酔って吐いた女性ファンに怒ったのが良くなかったと思う。吐いたものは、臭くてたまらないが、それがないと何だか、今、綺麗に片付ている部屋は、どこか寂しいと思っている。
それから、一週間が経った。
2024年11月21日。
アキヒコは、いつものように出勤した。
「えー、今日から仕事をすることになる人を紹介します」
と上司は、言った。
「フジムラミツキ君」と言った。
その時、「はい」と声をあげて、部屋に入ってきた女性は、京急品川駅で、ソフトクリームで、アキヒコのコートを汚した女性だった。
ミツキも、一瞬、アキヒコを凝視していた。
その日は、アキヒコもミツキも、びっくりしていた。
それから、暫くして。アキヒコは、。ミツキと食事へ行ったらしい。
世間では、いい夫婦の日に一緒に共演をしていた高畑充希と岡田将生が、本当に夫婦になったらしい。<完>
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