無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
君の過去
*
──ピンポーン
あれから一週間くらいが経った夕方。
夜ご飯を作りながら一樹くんの帰宅を待っていると、インターホンの音が鳴った。
……そろそろ一樹くんが帰ってくる時間だ。
どうしたんだろう……。鍵を持っていくのを忘れたりしたのかな。
こんな時間にお客さんが来ることもないし、多分一樹くんだよね。
料理をしていた手を止めて、私は玄関へと向かう。
そして、そっと扉を開けた。
「一樹くん……? おかえりなさい…っ」
彼に向かってそう言うと、急に強い力で腕を掴まれて。
「……っへ」
「……やっぱり。朝倉玲奈じゃん」
「え……?」
……この声、一樹くんのものじゃない。
それに、一樹くんはこんな強引に腕を掴んだりなんか……っ。
目の前にいるのは、一樹くんじゃない……?
はっとして、勢いよく顔を上げる。
そこには、同じ春桜学園の制服を身にまとった、知らない男の人がいて。