無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
その人は、にやにやとしながら私を見ると、より一層手に込める力を強くした。
ドクンッ、と嫌な音を心臓がたてる。さああっと血の気が引いて、背中に冷や汗が流れた。
……だ、だれ……?
どうして私の名前を知っているの……? それに、どうして私の家が……っ。
「うわ、近くで見ると本当に綺麗な顔してんね。
もっと近くで見せてよ」
彼はそう言うと、私との距離をぎゅっと詰めてきて。
怖くて仕方なくて、目に涙がたまりだす。
「なに、怯えてんの?
その表情、そそられるわ……」
「……や、めて、ください……っ」
「ダーメ。
キスの一つや二つ、簡単にできるけどどうする?」
「い、いやだ……っ」
……どうしよう……っ。
体が震えてきて、目からは涙がこぼれ落ちる。
それなのに、彼はますます距離を縮めてきて、一歩、二歩と後ずさる。
「……やめてください!!」