無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
「嘘!
こんなに美少女なのに、付き合ったこともないの?」
「ないない」
この年齢にもなって、まったく恋愛をしたことがなかった私。
恋愛事情について聞かれ、そう答えるたびによく驚かれていた。
──だけど、そんな私を大きく左右させる出来事が、まもなく起こったのだ。
実は、私が通っている高校は、中高一貫校の学園である。
だから、このときにはもう、電車通学をしていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていたときのこと。
1月も半分が過ぎた冬の日だった。
手袋とマフラー、そしてコートを装備しているのに、寒くてたまらない。
ホームの外に広がる夜の景色を、ぼうっとながめる。
はあっ、と小さく息をはけば、それは白くなり夜の空気に溶けていく。
そんな冬を味わっていたとき、突然、後ろからドンッと背中を押されたのだ。
「きゃっ……!」
一瞬のうちに、体がぐんっとよろめく。