無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる
朝倉玲奈が、だれよりも幸せそうに今を生きていることを。
始めは素敵だと思っていた。
幸せだと胸を張って生きることができることを。
笑顔でいることで、周りの人の笑顔を引き出すことを。
だけど、今の僕にとっては、それがなんともうらやましくて──妬ましくてたまらない。
あの日を境に崩れ去った幸せを、朝倉さんが持っていることが。
それを、周りに共有できることをも。
スーハー、と大きく深呼吸をしてから目を開ける。
朝倉玲奈は、僕にとって妬ましくてたまらない相手。
だから、それがあだになって、嫌いへと変わる。
僕は、朝倉玲奈が、嫌いだ。
大きな幸せを持っているから。
分かっている。それは僕の彼女に対する偏見でしかないこと。
でも、自分の中でどうしてもそれを肯定できなかった。
穏やかで人と関わることが好きで、優しいと言われていた〝僕〟から、無気力で最低で冷たくて、どうしようもない〝俺〟へと変わる。
この日を境に、僕は俺に変わったのだ。
だから、あの日から二週間後、変わり果てたクラスメイトたちに違和感を感じながら。
変わり果てた俺は、朝倉玲奈に嫌いだと告げた。