無気力な王子様は、今日も私を溺愛したがる


一樹くんの記憶とあの雷の夜が重なったから、一樹くんは合わせて一年間の記憶を思い出すことができたのかな。


「このことを黙っておいて、俺が真実を偽りながら玲奈と接することになるのが嫌で……。
今日、玲奈にこのことを話したんだよ」


そこまで話すと、一樹くんは私の方を向いた。

そして、私を見るなりふっと小さく息を吐く。


「……なんで玲奈が泣くの」

「……へ」


眉を下げて困ったように笑った一樹くんは、私にそう言った。

……泣いてる?私が?

そう思って目元を触ると、確かに濡れていた。

泣いている、ということを自覚したとたん、どんどん涙があふれ出してしまう。


「ごめ……っ」

「ねえ、玲奈」


一樹くんは、私を見るとクシャリと顔を歪ませて。


「こんな俺のこと、許してくれる……?」

「……っ」


一樹くんの言葉に思わず息をのむ。

儚くて、今にも消えてしまいそうな姿。


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