ギャルゲー転生 〜兄妹タッグで恋の成就!〜
 兄貴の幼馴染の高槻紗夜だ。兄貴が付き合える可能性がある子は、彼女だけだろうという結論にいたった。

 攻略相手は五人いる。

 たとえば、学年一の才女。兄貴にはおそらく彼女と渡り合える知的な会話はできない。バカなのねで終わりそうだ。

 他にはバスケ部のスポーツ少女。友人のノートを間違えて鞄に入れたと気づいてバスケ部の更衣室まで届けに行くも女子と男子間違えて……というハプニングが出会いだ。これは正直、ハードルが高い。兄貴がやった場合、ただの変態で終わる可能性もある。最悪、退学処分になるかもしれない。

 と、無理筋相手を消去していくと、お菓子づくりが趣味の平凡な幼馴染を狙っていくしかないと私は思った。兄貴にとっては、最初から彼女しか考えられなかったようだけど。なにせ前世での兄貴の最推し。等身大の抱き枕まで彼女をクリアして即買っていた。おそらく毎晩「紗夜たん紗夜たん紗夜たん紗夜たん」とか言いながら抱きしめていたんだろう。気持ち悪い。

 ま、紗夜ちゃんの等身大枕を買ったのを見て、そんなに面白いなら私もやろうと思ったんだけどね。

 私たちは玄関まで行き、引き戸をガラガラと開けた。

「健人君、瑞希ちゃん、こんにちはぁ〜!」

 明るい茶色の肩までのボブで、ポヤンとした雰囲気の彼女はその持ち前の可愛らしい声で一気に場を和ませてくれる。さすがギャルゲーの癒しキャラだ。

「おう、紗夜。今日もありがとな」
「紗夜おねーちゃん! 待ってたんだよ。ねぇ、持ってきてくれた?」

 私も四歳らしく頑張る。
 実は結構大変だ。

「もちろんだよぉ、瑞希ちゃんのために頑張ったんだから!」
「やったぁ。今日はなになに?」
「えへへ〜、チョコチップマフィンだよ」
「うわぁ、美味しそう! はるくん、一緒に食べようね」
「うん、食べよ」

 そう……紗夜ちゃんはいつも弟の春樹くんを連れてくる。やや人見知りで、私と同じ保育園に通っている。

 ほんと、かったるい。
 しかしだ。ゲームのラストでは突然結婚式まで時が飛んでいて、ちらっと参列する彼もスチルに描かれていた。

 ぶっちゃけ、かっこよかった。なので、幼児の相手は大変だけど可愛くはあるし、どうにかかっこよくなるまで待ちたいと思っている。

 つまり兄貴とは協力関係だ。兄貴は「妹がはるくんに会いたがっているみたいでさ」と簡単にダブルデートに持ち込めるし、私も未来のために兄貴には上手くいってほしい。外野での繋がりも大事だ。
< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop