ギャルゲー転生 〜兄妹タッグで恋の成就!〜
 そうしてお祭りの日になった。

 あの日は「私も大好きだよ」と言って笑ってくれた紗夜ちゃんに「俺も大好きです」「私も大好きです」となぜか丁寧語で同じ言葉を繰り返して、気もそぞろに「お祭りに今度四人で行くからなー」と二人にお知らせに行った。そのあとはドギマギしながらお祭りの話をして終えてしまった。

 あとから、様子がおかしかった俺たちに気づいていた瑞希に何があったのかと聞かれ――、話したら「どうしてそこで付き合ってほしいって言わないの! バカなんじゃないの」と呆れられた。お祭りで何がなんでも恋人になりなさいと言われ、今四人で近所の小学校にいる。まだ夕方だ。盆踊りは始まっていない。あと一時間くらいは屋台などのお店だけだ。

「晴れてよかったね、健人くん」
「そ、そうだな」

 すぐ近所なので、小学校に現地集合になった。そしてなんと、紗夜ちゃんは浴衣だ。赤や桃色、紫の花が可愛らしい。

「ゆ……浴衣、可愛いな」

 よし、言ったぞ。女の子に可愛いなんて言葉を使ったのは初めてだけど、頑張った。

「ありがと。えへへ、そう言ってほしくて悩んだんだけど、着ちゃった」

 着ちゃった?

 ああ……そうか。はるくんは正真正銘の幼児だ。突然走り出す可能性だってある。そんな活動的なタイプではないけど、何かあったら俺が動こう。瑞希の世話を焼いている兄貴のようで実は焼かずに済んでいるからな。日頃、瑞希に楽させてもらっている分、カバーしないとな。

「似合ってるよ」
「あ、ありがと」

 ああ……なんて可愛い笑顔なんだ。って、見惚れている場合じゃないな。瑞希とはるくんに目を配らないと。

「ね、スーパーボールすくいに行こ、はるくん」
「いいよ。何色にしよっか」
「んー。どうしようかな。少し大きいのもあるよね、キラキラしてるのも」
「うん。家にね、六個あるよ」

 おお、幼児同士の会話のようだ……!
 瑞希、頑張れ!

「にぃに、スーパーボールすくいに行ってくるね」

 ちょ、走ろうとするな! 行ってくるじゃねーだろ!

「勝手に行くな! 一緒に行くぞ」
「別にいい。はるくんと行く」

 そんな、ジト目で見られても。幼児だけで行ったら店の人だって困るだろ。お金は持っていないと落ち着かないらしく一応小銭入れに500円入れて渡してあるが、自分だけで使えという意味ではない。

 幼児になって少しバカになったよな。子供の脳になってまだ世の中からの刺激が足りないのだろう。回転も遅い。やっぱり俺がちゃんと見てやらないと。
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