ギャルゲー転生 〜兄妹タッグで恋の成就!〜
「駄目だ。保護者は必要だ」
「もー」
「もーじゃない」

 くすくすと笑う紗夜ちゃんと、並んで前を歩く二人を追う。

「ふふっ。瑞希ちゃんのこと、本当に好きだよね」
「え。別にそんなんじゃねーよ」
「好きだよ、絶対」
「……ほっとけないだけだ」
「そっか」

 そんなあったかい眼差しで見られると、そわそわするな。紗夜ちゃんとどうにか進展したい。さっき瑞希が来なくていいと言ったのも俺たちを二人きりにさせるためだろう。

 しかしな……瑞希が側にいるのに「恋人になってください」なんて言いにくいしな。

 瑞希とはるくんは幼児なのでスーパーボールはお玉ですくう。仲よくこれにしようかあれにしようかと話し合ってカップに入れるのを見守る。

「よし、次はたませんを食べるか」
「食べない。梨にする」

 ああ……なぜか梨も売られてるな。メジャーなのか?

「お前、たません好きだろ」
「……上手く食べられる自信ない」

 手先が不器用だし口も小さいから、苦労してるんだよな。

「ウェットティッシュもゴミ袋も持ってきた。落としても大丈夫だ」
「んー。じゃ、食べようかな」

 瑞希だと分かっていても四歳独特のぷくぷくほっぺのまんまるおめめでちょうだい要求されると庇護欲が湧くな。我が妹ながら可愛い。
 
 スーパーボールと違って受け取る位置が高い。はるくんも食べると言うので、紗夜ちゃんと一緒に列に並んだ。彼女は食べないらしい。はるくんが食べる補助をしたいのかと思って、俺が見てるぞと言ったものの首を振るので、あとで梨を四人分買おうと思う。

 ……梨は汚れないからな。

「やっぱり、健人くんと一緒に来てよかったなぁ」
「ん?」
「なんだか安心する」

 それは男として駄目なんじゃないか? 安心しないって言われるよりかはいいのかもしれないけど。

「ね、にぃにと紗夜おねーちゃんって恋人なの?」
「!?」

 ちょ! 妹よ! 突然ぶっこんでくるな! 空気を読め!

「え、えっと、あのな」

 ただでさえ暑いのに、変な汗がだらだらと突然吹き出してきた。紗夜ちゃんに視線を向けると彼女もあわあわしている。ここは俺が何か言わないと。

「こ、恋人だといいなと思うけど」
「そ、そうだね。恋人だといいなって」

 あー、もうどうすんだよ。前の列に並んでる大人が、あらあらまぁまぁって顔でこっちを見てるじゃねーか! おい、妹よ! 幼児にも程があるぞ!
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