ギャルゲー転生 〜兄妹タッグで恋の成就!〜
「そっか、じゃぁ恋人なんだね」
「あ……ああ。そうだ……な?」
「う、うん。そうかな」

 顔を見合わせて、つい視線をさまよわせてしまう。

 あー、もう。後ろの列の中学生くらいの女まで「やっば」とか「めちゃ初々しくない?」とか言ってるじゃねーか!

「よ、よかっ……」
「瑞希!?」

 なんで泣くんだ!
 どうした、妹!

「どうしたんだ、瑞希」
「にぃに。この体、すぐ涙でるっ……」

 この体って、おーい!

「みーちゃん。悲しいの?」
「違うの!」

 あー、はるくんまで泣きそうになってる。瑞希もそれに気づいたな。

「あ、あのね。嬉しくて泣いたの。紗夜おねーちゃんがいつか私のおねーちゃんになるかもしれないから」
「……ねぇねは、はるのねぇねだよ」
「にぃにと紗夜おねーちゃんが結婚したら、私のねぇねにもなるよ。にぃには、はるくんのにぃににもなるよ」

 ……分かりにくいな。
 しかも話が飛んだな。

「そうなの? はるのにぃにになるの?」

 はるくんがっ……!
 俺を期待に満ちた目でっ……!

「おう! なるぞ。はるくんのお兄さんだ。皆でいつか家族になろうな」
「やった、嬉しい」

 はるくん!
 俺を慕ってくれていたのか……!

 胸があったかくなってきた。もうポカポカだ。夏だから凄まじくポカポカだ。

「たません、いくつだい?」

 あ、もう俺たちの番だ。

「えっと、二つで」
「あいよ。坂口さんとこの子だね」
「あ、はい」

 よく見たら、近所の人だ……。親と歩いていた時に挨拶したことが何回かある。この盆踊り大会での屋台は、近くの子供会や学童の親やそのまとめをする幹事も参加してるんだよな。俺の親も売る側だったことがある。

「いい兄ちゃんだ。頑張んな!」
「は、はい。ありがとうございます」

 これ、近所で噂になるだろう。

 たませんを紗夜ちゃんとそれぞれ受け取って列から離脱し、隅の方へと向かう。

「ねぇ、健人くん」
「お、おう。なんだ?」

 俺の受け答えのせいで、近所公認カップルになりそうだ。申し訳ない……!

 紗夜ちゃんが潤んだ瞳でじっと俺を見る。

「いつか、私と家族になってください」

 プロポーズされた!?
 そこは俺からするところだろう!

「おう。いつか、俺と結婚してください」

 紗夜ちゃんが極上の笑顔をくれる。

「はいっ」

 ――俺たちの結婚式で、瑞希がこの時の話を披露するのは、まだ先のことだ。


【完】
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