苦手な上司にプロポーズすることになりました
「おい、ここになんの用だ……」
由真が社長室のあるフロアに上がると、同期で秘書の庄内竜吾が胡散臭げに佑茉を見た。
同期一のイケメンではあるが、秘書室にずっと詰めているので、あまり顔を合わせたことはない。
呑み会では結構話すのだが……。
「ついに私の実力が認められて、社長に呼ばれたんじゃないかとか思わない?」
「思わない」
食い気味に即答しおったな……と佑茉が思ったとき、社長室から、秘書室長の湯沢が現れた。
湯沢はまだ若く、すらっとしていて、長身だ。
のっぺりした顔にも見えるが、目鼻立ちが異様に整っている。
湯沢が、
「薬川さん、どうぞ」
と佑茉を社長室に通してくれた。
だから、なんの用なんだ……となにも知らされていないらしい竜吾がこちらを見ていた。