兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした



 ブランシュの元を去りながら、ノアールはやれやれと頭をかいていた。

(全く、俺もおせっかいになっちまったもんだな)

 本当はアスールが何かしら動くきっかけになればいい、そう思ってブランシュをけしかけに行くつもりだった。だが、いつの間にかブランシュに昔の自分を重ねてしまっていたことに自分でも驚く。

(アスールとレティシアが旧知の仲だということは新人たちには隠しているが、あいつになら言っても大丈夫だろう。あいつはそんなことで態度を変えるような人間でもないし、他人にペラペラとしゃべるような人間でもない)

 品行方正、冷静沈着なブランシュのことだ、ノアールに話しかけられたことをわざわざアスールやレティシアに言うこともないだろう。全く、あの若さであれだけ人間ができあがっていると、逆に心配になるほどだ。

(さて、ブランシュはどう出るだろうな。レティシアに縁談が来ているにも関わらずアスールがてこでも動かない人間だと知ったら、さすがに何かしら思うことはあるだろう。レティシア第一主義なところはアスールもブランシュも同じだが、アスールの方がレティシアと近すぎる点で拗らせているからな。手のかかる男だよ全く)

 やれやれ、と腰に手を当ててアスールとブランシュのことを思い浮かべた。

(誰かが幸せになると、他の誰かが辛い思いをする。そんな未来はクソくらえなんだがな)

 ふう、とため息をつきながらノアールは青空を見上げた。
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