兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
ブランシュのキラキラとした薄いアメジスト色の瞳がレティシアをじっと見つめる。あまりにも真っ直ぐな瞳に、思わずレティシアは目を逸らし床を見た。レティシアは口を開いて何かを言いかけてすぐ閉じ、そしてブランシュを見つめ返し、言った。
「うん。ちゃんと考えて、決めたことだから。だから、大丈夫」
そう言って静かに微笑むレティシアの顔は、晴れ晴れとしているがほんの少し痛々しくも感じられ、ブランシュは思わずレティシアに近づき、手を握った。その距離は今にも唇が触れてしまいそうなほどで、レティシアは思わず後ずさる。だが、ブランシュがレティシアの手を強く引き寄せ、その距離が離れることはなかった。
「レティシア、もし縁談相手が嫌な奴だったら、すぐに戻ってくるんだよ。我慢することなんてない、レティシアの居場所はここなんだから。もしもここに居場所がないって思うようなら、俺が君の居場所になる」
ね、と言いながらブランシュはレティシアの額に自分の額をそっと合わせる。あまりに突然のことにレティシアは頭が回らない。ブランシュとのあまりの距離の近さにレティシアの体温はどんどん高くなっていく。
「そ、それって、一体どういう意味……」
顔を真っ赤にしながら絞り出すように言うレティシアに、ブランシュはほんの少し微笑んで額を離した。
「そのままの意味だよ」
そう言ってブランシュは掴んでいたレティシアの手を離し、レティシアから数歩距離を取った。
「掃除の邪魔をしてごめんね。それじゃ」
ブランシュは何事もなかったかのように微笑んで、その場から立ち去る。レティシアは呆然としながらブランシュの背中を見つめていた。
(今のは、一体、何?)
ブランシュとの距離の近さ、握られた手や合わせた額から伝わる体温、向けられた熱い視線と言葉。今まで感じたことのないブランシュの様子に、レティシアは混乱し顔が赤くなっていく。
(よ、よくわからないけど、とにかく、掃除しなくちゃ……)
混乱する頭をぶんぶんと大きく振り、くるっと後ろを振り向くとその先に人が見える。そして見えた人物の姿に思わず喉がヒュッとなった。そこには、一言では言い表せないほど複雑な表情をした団長が悠然と佇んでいた。
「だ、団長……!」
「レティシア、ブランシュと随分と仲がいいようだね」
静かに、じわじわとアスールがレティシアに近づいてくる。あまりの気迫にレティシアは後ずさるが、アスールの歩幅は大きくあっという間にレティシアの目の前に来る。しかもレティシアの背中に壁がぶつかり、レティシアは壁とアスールに挟まれる状態だ。
「い、いつからいたんですか?」
「そこの曲がり角を曲がって来ようとしたら二人の声がしたから何事かと思えば、驚いたよ」
そう言ってレティシアを見下ろすアスールの目は据わっている。そして静かにレティシアの手を掴み、そっと唇を近づけた。その様子にレティシアは驚いて手を引こうとするが、アスールの掴む力は強く、そのまま手に口づけをされてしまう。
「だ、団長!?何を……」
「レティシアの居場所は、俺だろう?俺だけが、レティシアの居場所であってほしい」
レティシアの手から唇を離したかと思うと、今度はレティシアの額にそっと口づけた。またもや突然のことにレティシアは混乱し、呆然とアスールを見つめる。レティシアの顔は真っ赤で、まるでゆでだこのようだ。
「だ、団長」
「レティシアの居場所は、あいつじゃない。俺だ。……俺だよね」
懇願するようにアスールはレティシアを見つめる。答えるまではこの手を離さないという気迫がうかがえる。
「は、い」
やっとの思いで言葉を口にすると、アスールはホッとしたように微笑んだ。そして静かにレティシアの手を離す。
「驚かせて悪かった。それじゃ」
困ったような顔をしてそう言うと、アスールは静かにその場から立ち去った。何が起こったのか全く理解できないレティシアはただただ呆然としている。そして、突然その場にへなへなと崩れ落ちた。手や額に残る団長の唇の感触を思い出して、思わず両手で顔を覆う。
(な、な、な、何?何が起こったの?どうして?何?あれは何!?団長、一体どうしちゃったの!?)
「うん。ちゃんと考えて、決めたことだから。だから、大丈夫」
そう言って静かに微笑むレティシアの顔は、晴れ晴れとしているがほんの少し痛々しくも感じられ、ブランシュは思わずレティシアに近づき、手を握った。その距離は今にも唇が触れてしまいそうなほどで、レティシアは思わず後ずさる。だが、ブランシュがレティシアの手を強く引き寄せ、その距離が離れることはなかった。
「レティシア、もし縁談相手が嫌な奴だったら、すぐに戻ってくるんだよ。我慢することなんてない、レティシアの居場所はここなんだから。もしもここに居場所がないって思うようなら、俺が君の居場所になる」
ね、と言いながらブランシュはレティシアの額に自分の額をそっと合わせる。あまりに突然のことにレティシアは頭が回らない。ブランシュとのあまりの距離の近さにレティシアの体温はどんどん高くなっていく。
「そ、それって、一体どういう意味……」
顔を真っ赤にしながら絞り出すように言うレティシアに、ブランシュはほんの少し微笑んで額を離した。
「そのままの意味だよ」
そう言ってブランシュは掴んでいたレティシアの手を離し、レティシアから数歩距離を取った。
「掃除の邪魔をしてごめんね。それじゃ」
ブランシュは何事もなかったかのように微笑んで、その場から立ち去る。レティシアは呆然としながらブランシュの背中を見つめていた。
(今のは、一体、何?)
ブランシュとの距離の近さ、握られた手や合わせた額から伝わる体温、向けられた熱い視線と言葉。今まで感じたことのないブランシュの様子に、レティシアは混乱し顔が赤くなっていく。
(よ、よくわからないけど、とにかく、掃除しなくちゃ……)
混乱する頭をぶんぶんと大きく振り、くるっと後ろを振り向くとその先に人が見える。そして見えた人物の姿に思わず喉がヒュッとなった。そこには、一言では言い表せないほど複雑な表情をした団長が悠然と佇んでいた。
「だ、団長……!」
「レティシア、ブランシュと随分と仲がいいようだね」
静かに、じわじわとアスールがレティシアに近づいてくる。あまりの気迫にレティシアは後ずさるが、アスールの歩幅は大きくあっという間にレティシアの目の前に来る。しかもレティシアの背中に壁がぶつかり、レティシアは壁とアスールに挟まれる状態だ。
「い、いつからいたんですか?」
「そこの曲がり角を曲がって来ようとしたら二人の声がしたから何事かと思えば、驚いたよ」
そう言ってレティシアを見下ろすアスールの目は据わっている。そして静かにレティシアの手を掴み、そっと唇を近づけた。その様子にレティシアは驚いて手を引こうとするが、アスールの掴む力は強く、そのまま手に口づけをされてしまう。
「だ、団長!?何を……」
「レティシアの居場所は、俺だろう?俺だけが、レティシアの居場所であってほしい」
レティシアの手から唇を離したかと思うと、今度はレティシアの額にそっと口づけた。またもや突然のことにレティシアは混乱し、呆然とアスールを見つめる。レティシアの顔は真っ赤で、まるでゆでだこのようだ。
「だ、団長」
「レティシアの居場所は、あいつじゃない。俺だ。……俺だよね」
懇願するようにアスールはレティシアを見つめる。答えるまではこの手を離さないという気迫がうかがえる。
「は、い」
やっとの思いで言葉を口にすると、アスールはホッとしたように微笑んだ。そして静かにレティシアの手を離す。
「驚かせて悪かった。それじゃ」
困ったような顔をしてそう言うと、アスールは静かにその場から立ち去った。何が起こったのか全く理解できないレティシアはただただ呆然としている。そして、突然その場にへなへなと崩れ落ちた。手や額に残る団長の唇の感触を思い出して、思わず両手で顔を覆う。
(な、な、な、何?何が起こったの?どうして?何?あれは何!?団長、一体どうしちゃったの!?)