兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
縁談の行方
レティシアと別れ、アスールは自室に急いで戻るとドアを勢いよく閉めた。そしてその場にしゃがみ込む。
(何やってるんだ何やってるんだ何やってるんだ俺は!)
任務が終わってから自室に残る仕事を片付けるため寮内を歩いていると、ブランシュとレティシアの話し声が聞こえた。そっと壁越しに二人を覗き見ると、レティシアの縁談の話をしている。しかも突然ブランシュはレティシアの手を握り、あり得ないほどの距離でレティシアに話しかけ、あろうことか額と額を合わせたのだ。
それを見た瞬間のアスールの心臓は張り裂けんばかりで、血は逆流し二人の間に乗り込んでやろうかとすら思ったほどだ。だが、すぐにブランシュはレティシアから離れ立ち去り、レティシアは呆然としている。そんなレティシアを見ていると、自分でもわからないうちにいつの間にかレティシアの背後に進み、振り返ったレティシアの顔を見て本当にもう我慢ならなかった。
赤らんだ頬、少しだけ潤んだ瞳、自分に気づいた時の驚愕と戸惑いの表情。ブランシュとの姿を自分に見られたことがそんなにも嫌だったのだろうかとアスールは苛立ち、そのままレティシアに近寄り、手を掴んでキスをした。そして額にも同じようにキスを落としたのだ。それは紛れもなくアスールにとっての上書きだ。ブランシュが掴んだ手、そして合わせた額の感触も、何もかも自分のものに置き換えてブランシュのことなど忘れさせてしまいたいと思った。
(レティシアの居場所にブランシュがなる?バカを言うな、レティシアの居場所は今までもこれからもずっと俺だ)
居場所のことを聞いた時、レティシアははいと答えてくれたが、まるで強制的に言わせてしまったかのような形になってしまった。だが、それでも構わない。レティシアの居場所はブランシュではなく自分なのだとレティシアに刻みつけたかった。
(ブランシュがレティシアに触れただけで気が狂いそうだった。それにレティシアの居場所が俺以外になることも絶対に許せない。あぁ、こんなにも、こんなにも苦しいものだったなんて……)
アスールは立ち上がり、よろよろとソファに座り込む。
(俺は一体どうしたらいい?こんなになってしまうなんて自分でも想像できなかった。このままではきっと歯止めがきかなくなる。そしたら、レティシアに嫌われてしまうかもしれない。それだけは絶対に耐えられない。どうしたらいいんだ、レティシアをどうやったら諦められる?)
疲弊しきった瞳でふと机の上を見ると、一つの封書が目に止まる。それは実家から届いていた手紙だった。恐らくはいつもの縁談話だろう、随分前に届いていたが放置したままだ。
(俺も、他の誰かと結婚すれば、レティシアを諦めきれるのだろうか……)
アスールはぼんやりとした顔で、そっと机の上の手紙に手を伸ばした。
(何やってるんだ何やってるんだ何やってるんだ俺は!)
任務が終わってから自室に残る仕事を片付けるため寮内を歩いていると、ブランシュとレティシアの話し声が聞こえた。そっと壁越しに二人を覗き見ると、レティシアの縁談の話をしている。しかも突然ブランシュはレティシアの手を握り、あり得ないほどの距離でレティシアに話しかけ、あろうことか額と額を合わせたのだ。
それを見た瞬間のアスールの心臓は張り裂けんばかりで、血は逆流し二人の間に乗り込んでやろうかとすら思ったほどだ。だが、すぐにブランシュはレティシアから離れ立ち去り、レティシアは呆然としている。そんなレティシアを見ていると、自分でもわからないうちにいつの間にかレティシアの背後に進み、振り返ったレティシアの顔を見て本当にもう我慢ならなかった。
赤らんだ頬、少しだけ潤んだ瞳、自分に気づいた時の驚愕と戸惑いの表情。ブランシュとの姿を自分に見られたことがそんなにも嫌だったのだろうかとアスールは苛立ち、そのままレティシアに近寄り、手を掴んでキスをした。そして額にも同じようにキスを落としたのだ。それは紛れもなくアスールにとっての上書きだ。ブランシュが掴んだ手、そして合わせた額の感触も、何もかも自分のものに置き換えてブランシュのことなど忘れさせてしまいたいと思った。
(レティシアの居場所にブランシュがなる?バカを言うな、レティシアの居場所は今までもこれからもずっと俺だ)
居場所のことを聞いた時、レティシアははいと答えてくれたが、まるで強制的に言わせてしまったかのような形になってしまった。だが、それでも構わない。レティシアの居場所はブランシュではなく自分なのだとレティシアに刻みつけたかった。
(ブランシュがレティシアに触れただけで気が狂いそうだった。それにレティシアの居場所が俺以外になることも絶対に許せない。あぁ、こんなにも、こんなにも苦しいものだったなんて……)
アスールは立ち上がり、よろよろとソファに座り込む。
(俺は一体どうしたらいい?こんなになってしまうなんて自分でも想像できなかった。このままではきっと歯止めがきかなくなる。そしたら、レティシアに嫌われてしまうかもしれない。それだけは絶対に耐えられない。どうしたらいいんだ、レティシアをどうやったら諦められる?)
疲弊しきった瞳でふと机の上を見ると、一つの封書が目に止まる。それは実家から届いていた手紙だった。恐らくはいつもの縁談話だろう、随分前に届いていたが放置したままだ。
(俺も、他の誰かと結婚すれば、レティシアを諦めきれるのだろうか……)
アスールはぼんやりとした顔で、そっと机の上の手紙に手を伸ばした。