兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

両想い

 俺のせいだ、というアスールの言葉に、レティシアは首をかしげている。

「両親からは以前から様々なご令嬢との縁談の話がしょっちゅう来ていたんだ。はじめは律儀に返事を返して断っていたんだが、断っても断っても次々と縁談話が届いてくるからうんざりしてしまって」

 そのうち、両親からの手紙は開くこともなく放置する、ということが続いていた。中身を見ることすら億劫になっていたのだ。

 そして、今回の縁談についてもアスールは手紙に目を通すことなく、レティシアの縁談相手が自分だと気づかないままでいた。

「レティシアの縁談のことを聞いて、俺はどうしていいかわからなくなった。だからレティシアを諦めるために両親からの手紙にようやく手をのばしたんだ。そんな時、レティシアのおばあさまが突然やって来た」

 ちょうどノアールもアスールの元へやってきたタイミングで、レティシアの祖母もやって来たのだ。

「レティシアのおばあさまは、さっさとその手紙を見ろ、お前はいつまでレティシアを待たせるつもりかと言ってきて、何のことかと慌てて手紙を開いたんだ」

 そこには、レティシアとの縁談話が書かれていた。それを読んだアスールは驚愕し、そばで一部始終を見ていたノアールはレティシアの祖母を見て嬉しそうにニヤニヤと笑っていたという。

「俺は慌てて休暇を取って、レティシアのご両親の元へ挨拶に行き、自分の両親にも話をして、今こうしてレティシアの目の前にいる」

 アスールの話を聞いたレティシアは目を丸くしてアスールを見つめていた。

 まさか、自分との縁談相手が本当にアスールだったなんて。それに、自分を諦めるために両親からの手紙を読もうとした、とも言っていた。

「あの、私を諦めようとしたっていうのは……?」

レティシアが不安そうに聞くと、アスールは一度目を伏せてからふうっと息を吐いて、レティシアをしっかりと見つめた。その瞳には強い意思と熱い何が宿っていて、レティシアの胸はドキドキと高鳴っていく。

「俺はずっとレティシアのことを妹のように思っていた。それは嘘じゃない。でも、それがいつの間にかそれだけではおさまらなくなっていたんだ。レティシアの縁談話を聞いた時、俺の心は張り裂けんばかりでどうしようもなかった。レティシアが他の誰かの奥さんになるなんて信じられない、と」

 真剣にレティシアを見つめ紡がれる言葉に、レティシアは信じられずクラクラしてしまう。
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