兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
 まさかアスールが自分に妹以上の気持ちを持ってくれていただなんて、あまりの嬉しさに体中の血が速く巡って、顔が赤くなっていった。

「ブランシュとレティシアが仲良くしていることも俺には耐えられなかったんだ。あんな風にブランシュに触れられているのを見て、許せなかった。そんな気持ちを持つ資格なんてないはずなのに」

 アスールはそっとレティシアの手を取って静かに口づける。突然のことにレティシアは驚きアスールをじっと見つめると、アスールは困った顔をして手をぎゅっと握りしめる。

「そんな可愛い顔をされると、抑えがきかなくなりそうだ。……レティシアは俺のことを兄のようにしか思っていないだろうけれど、俺はこの縁談をレティシアに受け入れてほしい」

 レティシアの手を取ったまま前にひざまずき、アスールははっきりと言った。

「レティシア、俺の奥さんになってくれませんか。俺のそばにいて俺だけを見ていてほしい。俺は君のそばにいて君だけを見る。君を生涯かけて幸せにしたい」

 アスールの求婚に、レティシアは信じられない思いでいっぱいだ。自分はただの妹のようにしか思われていないと思っていたのに、まさか自分のことを好きでいてくれただなんて。

 アスールを諦めるために縁談を受けるつもりだったのに、まさかその本人が縁談相手だなんて、どんな奇跡が起こったのだろうか。

「……やっぱり、俺じゃ嫌かな?俺のことは兄のようにしか思えないかな」

 驚きのあまり何も言えなくなっているレティシアを、どうやら困らせてしまっていると勘違いしたアスールは、不安げにそう質問してきた。

「ちっ、違うの。アスールお兄ちゃんが嫌なわけではなくて……その、私も、アスールお兄ちゃんを好き……になってしまっていたから……」

 顔を真っ赤にしながら目線を泳がせ賢明にそう言うレティシアを、アスールは呆然と見つめている。

「私は寮母として未熟だし、お兄ちゃんは団長だし、それにきっと妹として可愛がられているだけなんだって思っていたから、縁談話が来たときも、お兄ちゃんがどう思うかって不安だったの。お兄ちゃんは私の思う通りにすればいいって言っていたけど、私にとってはそれが突き放されたように感じて……でも、違かったんだね」

 ふわっと嬉しそうに微笑むレティシア。そんなレティシアの笑顔に、アスールの心はぎゅっとわし掴まれた感覚になり、今すぐにも抱きしめたい気持ちでいっぱいだ。

「……返事を聞かせてもらっても?」

「私で、……私でよければ喜んでお受けします」

 レティシアの返事を聞いた瞬間、アスールはレティシアを抱きしめていた。

「ごめん、あまりにも嬉しくてつい」

 謝りながらも、アスールは抱きしめる力を緩めない。レティシアはアスールの腕の中でクスクスと嬉しそうに笑った。

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