兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした



 目の前に、ニーシャの顔がある。じっと見つめていると、ニーシャが不思議そうな、でも嬉しそうな顔でノアールを見つめていた。

「ノアールさん?」

 ニーシャに名前を呼ばれて、ノアールの胸はなんとも言いようのない幸福感に包まれる。そっとニーシャの白い頬に手を添えると、その柔らかさにノアールは身体中の血液がドクドクと流れるのを感じる。
 ほんのりと色づいた唇に、もしも自分の唇を重ねたらどんな感触だろうか。ニーシャはどんな反応をするだろうか。今なら、それができる。

 そっと、その唇に自分の唇を重ねようとニーシャに顔を近づけて……。


「うああっ」

 ガバッ!と起き上がると、ノアールは自分の心臓がドクドクと激しく鳴り響いていることに気付いた。寝ていて、どうやら夢の中でニーシャにキスをしようとしていたようだ。ノアールは両手で顔を覆って大きくため息をつく。

(なんて夢みてんだよ俺は……ガキじゃねぇんだから)

 気づいてはだめだ、そう思っているのに、いい加減自分の気持ちに気付けといわんばかりの夢を見る。夢の中でニーシャに触れていた感触が、まだ自分の掌に生々しく残っているようで、ノアールは自分の手を見つめてまた大きくため息をついた。

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