兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
◇
ニーシャの夢を見た次の日、ノアールはなんとなくニーシャを避けてしまっていた。ニーシャの顔を見たら、夢を思い出してしまいそうで怖い。
そう思ってずっとニーシャを避けていると、避けられていることになんとなく気づいたのだろう。ニーシャがノアールを追いかけてくる。いつのまにかノアールとニーシャの静かな追いかけっこが騎士団寮内で起こっていた。
「何やってるんですか」
鍛錬から戻って来たブランシュが、あきれたようにノアールを見ている。めんどくさい奴に遭遇したな、とノアールは渋い顔をしたが、そのノアールの背後を見てブランシュは珍しく笑顔になった。
「ニーシャさん」
「げっ」
ブランシュがニーシャの名前を呼ぶと、思わずノアールは変な声を出してしまう。
「何がげっ、なんですか」
背後からニーシャの静かな声が響く。ノアールは振り返らないようにしてその場を立ち去ろうとするが、目の前には笑顔のブランシュが立ちはだかっていた。
「おい!どけろよ」
「嫌です。ニーシャさん、先輩のこと探してるみたいでしたし」
「ありがとう、ブランシュ君。おかげでノアールさんと話ができます」
「は?なんでブランシュの名前を知って……」
思わず振り返って、ノアールはしまったと思った。そこにはニーシャが張り付いた笑顔で仁王立ちしている。
(こえええ)
「それじゃ、邪魔者は消えますので、ちゃんと話してくださいね」
ブランシュはそう言って二人に背中を向けてその場から立ち去っていく。
(俺もこの場からいなくなりたい)
ノアールは心の中で呟くが、そんなことはできない。諦めてニーシャを見ると、さっきまでの張り付いたような笑顔ではなく、どことなく悲しそうな表情をしていてノアールは胸が痛んだ。
「朝からずっと私のこと避けてましたよね?」
「いや?そんなことは、ない……はず」
ノアールはなんとかごまかそうと思ったが、ニーシャの顔はどんどん悲しさを増していて嘘がつけない。すると、ニーシャは小さく深呼吸して悲し気に微笑んだ。
「ここにいるとノアールさんにご迷惑がかかってしまうようですし、私やっぱり家に帰ります。申し訳ありませんでした。それだけ言いたかったんです、それじゃ」
ペコリ、とお辞儀をしてニーシャがその場からいなくなろうとする。
(あれ、俺、怒られるんじゃないのか?いや、家に帰るってそんな)
呆気にとられていたノアールだったが、いなくなろうとするニーシャに気づいて咄嗟に手を掴む。
「っ、離してください」
「離したら家に帰ろうとするんだろ?危ないからダメにきまってるだろうが」
「でも」
「ノアール?」
突然自分の名前を呼ぶ声がして咄嗟に振り向くと、そこにはアスールと不思議そうな顔をした一人の女性が立っていた。
「アスール、と……ユリア」
「ノアール、元気そうね。何してるの?」
屈託のない笑顔をノアールに向けてユリアは尋ねる。
「ユリアこそ、この寮で何してるんだよ」
「レティシアに届け物があって持ってきたの」
隣のアスールを見ると、静かにうなずく。ノアールがユリアとアスールに気を取られていきる隙に、ニーシャはノアールの手を払いのけるとお辞儀をして走り出す。
「あっ、おい!」
ノアールはニーシャの背中へ呼びかけるが、背中はどんどん遠ざかっていく。
「行かなくていいのか?」
アスールが静かにそう聞くと、ノアールは払いのけられた手を見つめてからギュッと握り締める。
「……せっかく会えたのに悪い、またな」
ノアールはユリアをジッと見つめてからそう言って、すぐにニーシャを追いかけた。
ニーシャの夢を見た次の日、ノアールはなんとなくニーシャを避けてしまっていた。ニーシャの顔を見たら、夢を思い出してしまいそうで怖い。
そう思ってずっとニーシャを避けていると、避けられていることになんとなく気づいたのだろう。ニーシャがノアールを追いかけてくる。いつのまにかノアールとニーシャの静かな追いかけっこが騎士団寮内で起こっていた。
「何やってるんですか」
鍛錬から戻って来たブランシュが、あきれたようにノアールを見ている。めんどくさい奴に遭遇したな、とノアールは渋い顔をしたが、そのノアールの背後を見てブランシュは珍しく笑顔になった。
「ニーシャさん」
「げっ」
ブランシュがニーシャの名前を呼ぶと、思わずノアールは変な声を出してしまう。
「何がげっ、なんですか」
背後からニーシャの静かな声が響く。ノアールは振り返らないようにしてその場を立ち去ろうとするが、目の前には笑顔のブランシュが立ちはだかっていた。
「おい!どけろよ」
「嫌です。ニーシャさん、先輩のこと探してるみたいでしたし」
「ありがとう、ブランシュ君。おかげでノアールさんと話ができます」
「は?なんでブランシュの名前を知って……」
思わず振り返って、ノアールはしまったと思った。そこにはニーシャが張り付いた笑顔で仁王立ちしている。
(こえええ)
「それじゃ、邪魔者は消えますので、ちゃんと話してくださいね」
ブランシュはそう言って二人に背中を向けてその場から立ち去っていく。
(俺もこの場からいなくなりたい)
ノアールは心の中で呟くが、そんなことはできない。諦めてニーシャを見ると、さっきまでの張り付いたような笑顔ではなく、どことなく悲しそうな表情をしていてノアールは胸が痛んだ。
「朝からずっと私のこと避けてましたよね?」
「いや?そんなことは、ない……はず」
ノアールはなんとかごまかそうと思ったが、ニーシャの顔はどんどん悲しさを増していて嘘がつけない。すると、ニーシャは小さく深呼吸して悲し気に微笑んだ。
「ここにいるとノアールさんにご迷惑がかかってしまうようですし、私やっぱり家に帰ります。申し訳ありませんでした。それだけ言いたかったんです、それじゃ」
ペコリ、とお辞儀をしてニーシャがその場からいなくなろうとする。
(あれ、俺、怒られるんじゃないのか?いや、家に帰るってそんな)
呆気にとられていたノアールだったが、いなくなろうとするニーシャに気づいて咄嗟に手を掴む。
「っ、離してください」
「離したら家に帰ろうとするんだろ?危ないからダメにきまってるだろうが」
「でも」
「ノアール?」
突然自分の名前を呼ぶ声がして咄嗟に振り向くと、そこにはアスールと不思議そうな顔をした一人の女性が立っていた。
「アスール、と……ユリア」
「ノアール、元気そうね。何してるの?」
屈託のない笑顔をノアールに向けてユリアは尋ねる。
「ユリアこそ、この寮で何してるんだよ」
「レティシアに届け物があって持ってきたの」
隣のアスールを見ると、静かにうなずく。ノアールがユリアとアスールに気を取られていきる隙に、ニーシャはノアールの手を払いのけるとお辞儀をして走り出す。
「あっ、おい!」
ノアールはニーシャの背中へ呼びかけるが、背中はどんどん遠ざかっていく。
「行かなくていいのか?」
アスールが静かにそう聞くと、ノアールは払いのけられた手を見つめてからギュッと握り締める。
「……せっかく会えたのに悪い、またな」
ノアールはユリアをジッと見つめてからそう言って、すぐにニーシャを追いかけた。