兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
◇
「レティシアに、縁談……?」
アスールは驚いた顔でそうつぶやくと、ノワールは夕方に見た光景をアスールに伝えた。
「その後、レティシアがばぁさんにどう返事したかは知らないけど、あのばぁさんのことだから有無を言わさず縁談を進めるだろうな」
ノアールの話を聞きながら、アスールは身体中から血の気が引いていくのを感じていた。あのレティシアが結婚するかもしれない。それはいずれ訪れる遠い未来だと覚悟はしていたがまだ先の話だと思っていたし、それまではきっと自分の気持ちの整理もどうにかしてつくはずだと高を括っていたのだ。
だが、それは遠い未来の話ではなくなってしまった。今、現在進行形でレティシアの身に降りかかっている。あの可愛いレティシアが、他の誰かと結婚してしまうかもしれない。そう思っただけでアスールは吐き気がしてきた。
「おい、大丈夫か?」
「……大丈夫なわけがない」
絞り出すようなアスールの返事に、ノワールは苦笑した。
「お前がのんびりとお兄ちゃんポジションに甘んじている間に、レティシアは誰かの奥さんになっちまうかもしれないんだぞ。それでいいのか?」
その言葉に思わずアスールが顔を上げノアールを見る。その顔は憎悪にまみれた顔で、ノアールは思わずおっかねぇな、とつぶやいた。だが、憎悪にまみれた顔は一瞬で表情が無くなり、瞳から色が無くなる。
「……俺みたいな腑抜けた男より、その縁談相手の方がレティシアを幸せにしてくれるかもしれないな」
ぽつり、とアスールがつぶやくと、ノアールは眉をしかめて目を細めた。
「お前、本当に救いようのない馬鹿だな」
「レティシアに、縁談……?」
アスールは驚いた顔でそうつぶやくと、ノワールは夕方に見た光景をアスールに伝えた。
「その後、レティシアがばぁさんにどう返事したかは知らないけど、あのばぁさんのことだから有無を言わさず縁談を進めるだろうな」
ノアールの話を聞きながら、アスールは身体中から血の気が引いていくのを感じていた。あのレティシアが結婚するかもしれない。それはいずれ訪れる遠い未来だと覚悟はしていたがまだ先の話だと思っていたし、それまではきっと自分の気持ちの整理もどうにかしてつくはずだと高を括っていたのだ。
だが、それは遠い未来の話ではなくなってしまった。今、現在進行形でレティシアの身に降りかかっている。あの可愛いレティシアが、他の誰かと結婚してしまうかもしれない。そう思っただけでアスールは吐き気がしてきた。
「おい、大丈夫か?」
「……大丈夫なわけがない」
絞り出すようなアスールの返事に、ノワールは苦笑した。
「お前がのんびりとお兄ちゃんポジションに甘んじている間に、レティシアは誰かの奥さんになっちまうかもしれないんだぞ。それでいいのか?」
その言葉に思わずアスールが顔を上げノアールを見る。その顔は憎悪にまみれた顔で、ノアールは思わずおっかねぇな、とつぶやいた。だが、憎悪にまみれた顔は一瞬で表情が無くなり、瞳から色が無くなる。
「……俺みたいな腑抜けた男より、その縁談相手の方がレティシアを幸せにしてくれるかもしれないな」
ぽつり、とアスールがつぶやくと、ノアールは眉をしかめて目を細めた。
「お前、本当に救いようのない馬鹿だな」