幼なじみ ~未練~
幸せな夢 = 虚しい夢
『俺、ずっと前からきーが好き』

「わたしも!」

夢の中で返事をしたつもりなのに、声が漏れていて、しかもその声で目を覚ます。

隣では、

「ききちゃん、どうしたの?」

寝ぼけまなこの佑典(ゆうすけ)が喜々良(ききら)を見る。

「あ、ごめんね。
夢を見てて…」

「…ふーん?」

佑典はまるで唸るように言うと、喜々良に背を向けた。

見置(みおき)の夢でも見てるのかもしれない、そう思い、胸が苦しくなる。

そしてふと、昔を思い出す。

『見置の事、好きなままでもいいから、付き合ってくれないかな?』

確かにかれこれ十数年前の告白で、そう言った。

喜々良が幼なじみの見置 健悟(けんご)を好きなことは一目瞭然だったから、健悟を好きなままでもいいと言った。

それが、もしかしたら今も…?

いや、そんなはずない。
だって子どももいるんだよ?

ありえない、そう信じたいのに、心がザワザワする。
< 3 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop