人生詩集・青少年編

虹駆ける心

雨あがりの広っぱ あっちこっちに水たまりができて
その上をトンボが ときどき水面に尻をつけながら 楽しそうにとんでいる
その水面にさざ波をたてて さわやかな風が 少年のほおをなでて行く
見あげれば雲のすきまから いくすじもの光が地上にさして おおきな虹の橋を空につくった
「わあ」とおおきな声をあげて少年はよろこんだ
こんなきれいなそら、ぼくは…

学校のひけた午後の工場まち とおくの大工場で仕事再会のサイレンがなり
いっときやんでいた騒音が 雨あがりの空気をつたって あたりに震動をひびかせはじめた
たちのぼる鉄と機械のにおい 工場まちの午後のはじまりだ
しかし広っぱは 少年のこころをまだひろげていた
空気がとってもおいしくって きもちよくって まるで別世界にいるようだった
はいいろの工場まちに住む少年にとって このひとときは そしてこの広っぱは
神さまからいただいた 宝石のようなひととき ゆめの世界

少年はどこか遠くの国 本で読んだだけの 見知らぬ外国のまちにおもいをはせた
見あげれば数羽のハトが 光のすじをよぎって 虹のかけ橋をこえて 南のそらをさして飛んでいった
いきたいな ぼくも…

そんな少年をからかうように またハトといっしょに飛んでいきそうな 少年のこころを よびもどすかのように
足もとでトンボが クルクルと輪をかいて
水平飛行をしてみせた…

                     【虹と鳩】
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