ただ、一面の青。
ニコッと笑顔を作っていれば、視界の端に青くんが映り、引き寄せられるように目を向けた。
視線が煩かったのか、彼は一瞬だけ私を見ると、またすぐ手元のスマホに目線を戻した。
「そう言えばサク、また彼女出来たって」
私の視線に気付いたのか、そもそも皆盗み見ていたからか、話題はあっという間に“サク達”に移り変わる。
「え!!誰!?」
「3年のミスコン優勝者」
「え、前も付き合ってなかった?」
「前は準優勝者」
話題は大体サクが告られた、付き合った、別れた。この3つ。
この2週間でも既に何度か彼女が忙しなく入れ替わっている。
「皆詳しいですね」
「そりゃあ、サク達の話は嫌でも耳に入ってくるもん」
「ね〜!本当えぐいってか、クズ」
「私なら絶対付き合いたくない」
「でもあの顔に告られたら揺らぐわ」
「まぁ、一回するだけなら経験してみたい」
有り得もしない妄想。
なんて言った瞬間爪弾きになるのは目に見えているけど、こんな風にただ消費されるコンテンツと化した青くんに同情してしまう。
青くんは本当はそんな人じゃないのに、と。
言われ慣れているのか聞こえてないのか、当の本人は全く気にしていない様子ではあったけれど、モヤつく感情は消えなかった。
気になってまた隠れて彼を見れば、やはり視線が煩わしいのか再度目があった。