ただ、一面の青。


「リン、うっさい。早くこっち来い」

「んだよ、サク不機嫌かよ」

麟太朗くんは渋々と言った顔で、近寄り難い程煌びやかな集団の方へ向かう。

大体7、8名で構成されている彼らは所謂一軍。


「サク〜!お前の写真SNSでバズってんぞ」

「何これ、普通に隠し撮りじゃん」

「おー、この写真エモっ」

はしゃぐ声は教室の端から端まで届く程の大きさ。
それを疎ましいと思う人間もいるだろうけれど、大抵は心のどこかで許してしまっている。


スクールカーストは目に見える物差しもないのに明確に区分されている。

りんごは果物。茄子は野菜。
そんな風に、あの子は一軍。あの子は二軍、と。


どこに属するか自分では決めれないのに、誰でも瞬時に理解できる。自分は○軍だ、と。

私は誰に言われずとも二軍。
マジョリティに紛れて暮らす、その他大勢の一人。
特別美女でもなければ特別ブサイクでもない。学力も平均、運動も平均。

訳ありっぽい季節外れの転校生も、形を潜めればあっという間に背景に溶け込める。


これからも、それは変わらないはずだった。
彼さえこんな事を言わなければ。


「菜乃花ちゃん!!放課後暇?一緒に遊びに行こーよ!!」


空気の読めない麟太朗くんの、この発言さえなければ。

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