ただ、一面の青。
「え、どうして、ですか?」
突然降ってきた訳の分からぬ提案に目を瞬かせる。
「引っ越してきたばっかでしょ?俺達が街案内してあげるよ!」
「え…」
他の面々を盗み見ると、瀬戸くんは無表情。青くんも興味なさげ。
ユナちゃんとその他友人は明らかに嫌そうな顔をしていて、完璧に麟太朗くんの独断であろう事が窺えた。
「皆さんのお邪魔する訳には…」
「え〜?全然邪魔じゃないよ!ね、みんな!」
麟太朗くんが笑顔で後ろを振り向けば他の人達は曖昧に頷く。
そりゃあ面と向かって邪魔だとは言えないだろう。
「…悪いから、、大丈夫です…」
誰の事も傷つけず角が立たないように。
そうやって尖りを削ぎ落とした言葉を使うと、彼は「全然悪くないよ!気にしないでよ、菜乃花ちゃん!」と純度100%の笑みを浮かべた。
困惑に少しくらい気付いてほしい。
「いや…でも、」
断り方を迷っていれば「菜乃花ちゃんの友達もおいでよ!」と有難くない助け舟。
「皆いた方が楽しいんじゃない?」
「それは流石にご迷惑、」
その船に乗るつもりはなかったのに、友人らしき人々は甘い蜜に群がる蜂のように、我先にと「え!行きた〜い!」と高い声を出し始めた。
さっきまでその口で「クズのくせに」と言っていた人達とは思えない。