ただ、一面の青。

瓶覗




「俺と植草さん抜けるから」

二人揃って化粧室から戻った時点でも驚きが凄かったのに、更にこの発言のせいで全員あんぐりと口を開けていた。

肩を引き寄せられギョッとして青くんを見れば、私の都合なんてお構いなしに「な?」と圧力をかけてくる。言うことを聞くと言った手前、反故するのは出来なくて「あ、、はい…」と小さく頷く。

骨が軋むほど強く掴まれた肩。親しい間というより警察に捕まった犯人のようだったけど、外野からそうは見えなかったらしい。


周りの反応は大まかに2つ。面白がっているか、敵認定しているか。1つ目は男子達で、言わずもがな2つ目は女子達。

中でもユナちゃんの憎しみ溢れる目は夢に出てきそうだ。彼女が青くんを好きなのを今初めて知った。

安心して欲しい。決して私はそんなんじゃないから。とは口に出来なくて、その視線には気付かないふりをする。


「ちょ、ちょっと、待てよサク!」

止めに入ったのは焦った麟太朗くん。

「今日は菜乃花ちゃんに街案内するって約束したのに!」

「でもずっとゲーセンに居んじゃん。飽きた」

「今出るから!ほら、行こ?菜乃花ちゃん!次は駅近で美味いアイスの店があって、」

「リン」

話を遮った青くんが、肩に乗せた腕をするりと下げて今度は腰を引き寄せた。


「植草さんは俺と居たいってさ」
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