ただ、一面の青。
その人達が廊下を歩くだけでレッドカーペットさながら皆道を譲るし、あからさまに見惚れている人も、興味ないふりして横目で見ている人もいて、つまり彼らは一軍。要は校内の有名人。
連休中に出会った彼らはどうやら同じ学校だったらしい。
私服だったし大学生にも見えたのに、中身は私と変わらない高校2年生。
同じ服さえ着せちゃえば、大人っぽい美女も、やんちゃ少年も、インテリ風美形も等しく高校生に見えるんだから、制服はそれだけで意味がある。
「あ、こんにちは」
深々と丁寧に頭を下げる。
誰かを不快にしないよう礼儀を尽くすのは私にとって大切な事。
「え、なになにめっちゃ堅い」
「前回そんなだったっけ?」
「あれは…青くんがいたから…」
あの時が特別だったのだ。
そういえば青くんはどこだろう、と辺りを見回せば「サクは今日遅刻〜」と麟太朗、と呼ばれている彼が答えてくれた。
「…遅刻」
なかなか不真面目らしい。
「ってか菜乃花ちゃん、なんで『青』呼び?あいつ嫌がるから辞めた方がいいよ?」
やんちゃ代表な麟太朗くんがインテリ風美形男子に「な、瀬戸〜」と声を掛ける。だが返事が返ってきたのは『瀬戸』くんではなく隣の美女。
「ね、気になってた。みんな『サク』って呼んでんのに」
気に食わない、とでも言いたげに美女が眉を寄せる。