ただ、一面の青。


「あ…そうなんですね。…ところで、なんで『サク』?」

私の質問に3人は顔を見合わせ、苦笑いのような呆れたような不思議な表情を見せた。

「ファンなのに知らないわけ?ユナ信じらんない」

どうやら美女さんは『ユナ』と言うらしい。

必死で名前を覚えていく。
ヤンチャは麟太朗。インテリは瀬戸。美女はユナ。
ヤンチャは麟太朗、インテリは瀬戸、美女は…反芻していている間に「佐久間 青。だから『サク』」と瀬戸くんから助けが。


「なるほど。ありがとうございます。瀬戸くん」

深くお辞儀をすれば、また形容し難い顔で瀬戸くんが「…うん」と頷いた。

「なんか菜乃花ちゃん不思議な空気感だね」笑う麟太朗くんに対して、ユナちゃんは「ただの陰キャでしょ」と吐き捨てる。

すでに嫌われてしまったようだ。


私が陰キャなのは紛れもない事実なので「不快にさせてごめんなさい」と怒られる前に謝る。

「は?何それやめてよ。ユナが虐めてるみたいじゃん」

「いえ、決してそんな事はなくて…」

機嫌が悪いユナちゃんをモゴモゴと小さな声で宥めていれば、「あ!サクだ!!」と色めき立った声が所々から聞こえてきた。

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