ただ、一面の青。
サク、と馴染みのない名前で呼ばれている彼は、遅刻もまるで気にせず、人目だって知らんぷりで校門から校舎まで堂々とスマホをいじりながら歩いている。
「こら、佐久間!せめて走れ!」
「へーい」
怒る先生に片手をあげれば女子の歓声が飛び、「サクおっはよ〜」と顔を赤らめて叫ぶ学生達に緩く手を振り返せばうっとりとしたため息がそこかしこから聞こえてきた。
「サクは相変わらず凄いねぇ」
「今日のビジュ控え目に言っても最高じゃない?」
「ユナ、それ毎日言ってる」
さすが友人3人。
取り乱す輪の中には入らず慣れた様子で青くんの動向を見守っている。
「サク〜こっちこっち!!」
麟太朗くんの大きな呼び声に、気怠げに近寄ってきた青くんは、「起きてすぐリンの声キツ。鼓膜破れそう」と耳を抑えた。
「もう昼だからね!?ってか傷つくわ!俺に謝れ!」
「サク遅い〜!もうユナ達ご飯食べ終わっちゃったよ〜」
「邪魔」
青くんは纏わりつく二人を嫌そうに引き剥がし、そして初めて存在を認識したみたいに私に目を遣った。