Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜


 昼食時間にあたる忙しい時間帯を終え、せっせと動き回る。売れた商品の補充やカウンターフーズの調理をしながら、想乃の目はレジの時刻表示と外とを行ったり来たりする。

 ひと通りの補充が終わり、息を吐き出した。レジのディスプレイから時計を確認し、あと十五分か、と思う。

 来店ベルが鳴った。出入口のガラス扉を押して常連のサラリーマンが数人入ってくる。「いらっしゃいませ」と声を上げた。

 カウンターに運ばれた商品をスキャナで読み取り、必要な客にはレジ袋に入れて商品を渡す。会計金額をレジに打ち込む際、何となく視線を感じた。目の前の客がどこか残念そうに眉を下げ、嘆息をもらしていた。目線は想乃を見ていたが、ぼんやりとしたうつろな表情から何か別のことを考えているのだと察した。

 仕事で嫌なことがあったのかもしれないな。そう考え、お釣りを渡した。サラリーマンの男性は沈んだ表情のまま退店する。

 店内の客がひとりもいなくなり、想乃は同じ時間帯のシフトで入っている同僚に声をかけた。

「すみません、休憩いただきます」

 時刻は14:27。昨日届いた未来人からのメールにあった時間まで、あと三分だ。昨夜想乃を悩ませ若干寝不足にまで陥ったので、この目で確かめないわけにはいかないと思っていた。

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