Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

　三人の男子生徒が、たった一人を寄ってたかって痛ぶっている。三人のうちの一人が上靴を履いた足で短髪男子の頭を踏み付け、あとのふたりが抵抗しないように抑えつけていた。ひと目見ていじめだと分かる。

　はて。今は授業中のはずだけど……。男は首を傾げながらも、スーツの内ポケットからスマホを取り出した。

「ほら、食えよ〜」

　頭を踏み付けた男子が無抵抗の男子にカマキリの卵を食べさせようとしている。悪趣味極まりない行為だ。よくよく見てみると、いじめられている男子は鼻血を出していた。ほかにも鼻や頬に絆創膏が貼られていて、真新しい擦り傷もできていた。

　男は彼らにスマホを向けたままでにやつき、突如として笑い声をあげた。そして揶揄するような口調で歌を口ずさむ。

「み〜ちゃったー、み〜ちゃったー！　せ〜んせぇーに言ってやろぉ〜」

　加虐性に富んだ男子生徒らは一様に肩をびくつかせ、声のした方向へ目を向けた。

「だ、だれだよ、おまえ」
「これはこれは失礼。私は通りすがりの営業マンであります」

　そう言いながらもスマホは一直線に彼らへ向けたままだ。三人は未だに地面に伏せた男子を上から抑えつけている。

「な、何やってんだよ」
「何って動画撮影」
「はぁ……！？」