Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 いじめっ子三人は状況を理解し、即座に男子生徒から飛び退いた。

「いいよねぇ、きみたちみたいなのがいると。ネットにタグを付けて晒したらバズりそうじゃない?」
「……っな、」
「お、脅してんのかよ、卑怯だぞ!」
「ほらほら、何やってんの。カメラ目線で続けてよ? とりま何年何組の何くんか自己紹介してみよう、ほら早く!」

 さっきまでお山の大将気取りでいた男子がチッ、と舌打ちをもらした。あとの二人に目配せをして、ただちにこの場から去って行く。「あー、逃げた」と置いてけぼりをくった営業マンはスマホを元の内ポケットに仕舞った。

「大丈夫かい、少年」

 いくらか屈んだ姿勢で手を差し伸べるが、痛めつけられていた男子生徒は自力で立ち上がった。営業マンの男にペコ、と会釈だけを残すと、彼もこの場から立ち去った。

 男は何も発しない彼を見て、大仰にため息を吐いた。

「なんとも嘆かわしい……」

 今どきあんないじめがまだ横行しているとは。教師陣はいったいなにをやっているのか。

 男は今度こそ来客用玄関へ向かい、スリッパから革靴に履き替えた。ビジネスバッグを手に、校外の駐車場へ歩き出す。
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