Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

「残念だったな」と続け、心底彼らを軽蔑するように嘲笑っている。

　三人は青ざめた顔つきを一転させ、身勝手な怒りを爆発させた。「うわぁああーっ！！」とがむしゃらに叫び声を上げて、三人が三人とも営業マンの男に突っかかって行く。自分たちよりはるかに背の高い男を取り押さえ、スマホを奪い取ろうとした。

　男は彼らの攻撃をひょいひょいと交わし、ひとり目の腕を捕まえ手首を捻り上げた。そのまま地面に叩きつけ、ふたり目も同様に捕まえて戦闘不能状態にしている。

　残った田辺はスタンガンを手に挑みかかるが、ひょいと避けた男に腕の中ほどを掴まれ捻り上げられた。先の少年たち同様に地面に倒れ込み、手からスタンガンが滑り落ちた。

「大人を舐めちゃあいけないよ。営業マンは多少の武術ぐらい心得えているからねぇ」

　手のひらをぱんぱんとはたき、男は身を起こす男子生徒たちを見やる。彼らは自分たちの通学鞄を引っつかむと、そそくさと逃げ出した。

「きっとネットニュースに取り上げられるだろうから、楽しみにしてるねー？」

　去って行く学ランの背中を見つめながら男は楽しそうに手を振った。

「あの」

　傍らより弱々しく声が届く。振り返って見ると、いじめの被害者である男子生徒が、おどおどした様子で男に頭を下げていた。「ありがとうございました」と礼を言う。