Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
少しの安堵から緩んだ郷の顔が、再度強張った。警察沙汰というワードに怖気を募らせている。
「とは言っても。まだ十三歳以下だから刑罰が課せられることはないし、少年法によって家庭裁判所から何らかの処罰を受けることになるんじゃないかな。あの子たちが自分のしたことにどれだけ罪の意識を感じているかはわからないけど……更正させるためには罰が必要だから」
「じゃあ……逮捕は」
「うん。それはないだろうね。ただ郷くんは被害者になるから家裁からなんらかの聞き取りはお願いされるかもしれないけど」
「そう、ですか」
不安から眉を寄せる郷を見つめ「ああ、そうだ」と男が懐のポケットに手を入れた。紺色のハイブランドの名刺入れから一枚を取り出し、郷に手渡した。
郷は会社名とその下に書かれた名前を見て、眉をひそめた。「なみ、」と呟き、読み方に迷っている。
「並樹慧弥といいます」
ふわりと優しげに笑う男、並樹を見つめ、郷がその名前を復唱した。
「怪我も心配だし。よかったら家まで送って行こうか?」
「……あ。ありがとう、ございます」
二度も助けられたことと、姉の友人だと名乗られたこと。郷は並樹を信用し、助手席へと乗り込んだ。
「とは言っても。まだ十三歳以下だから刑罰が課せられることはないし、少年法によって家庭裁判所から何らかの処罰を受けることになるんじゃないかな。あの子たちが自分のしたことにどれだけ罪の意識を感じているかはわからないけど……更正させるためには罰が必要だから」
「じゃあ……逮捕は」
「うん。それはないだろうね。ただ郷くんは被害者になるから家裁からなんらかの聞き取りはお願いされるかもしれないけど」
「そう、ですか」
不安から眉を寄せる郷を見つめ「ああ、そうだ」と男が懐のポケットに手を入れた。紺色のハイブランドの名刺入れから一枚を取り出し、郷に手渡した。
郷は会社名とその下に書かれた名前を見て、眉をひそめた。「なみ、」と呟き、読み方に迷っている。
「並樹慧弥といいます」
ふわりと優しげに笑う男、並樹を見つめ、郷がその名前を復唱した。
「怪我も心配だし。よかったら家まで送って行こうか?」
「……あ。ありがとう、ございます」
二度も助けられたことと、姉の友人だと名乗られたこと。郷は並樹を信用し、助手席へと乗り込んだ。