Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「あ〜あ、たまには分厚いステーキ肉とか食べたいよ」
「無理言わないのー」
「そんなこと言って姉ちゃんだって本当は食べたいくせに」
「そりゃあね」と言って冷蔵庫から玉ねぎを出した。思わずふぅと嘆息をもらしてしまう。
「てか、姉ちゃん。お母さんの病院行ったの?」
「……うん」
「そっか。お母さん……やっぱ反応ない?」
「うん」
病院で立ち聞きしたことを思い出し、想乃は表情を暗くした。玉ねぎを洗いまな板の上でくし切りにする。あらかじめ二分の一で冷凍しておいたうすあげを、お湯に浸して油抜きをする。
「あ、そうだ!」
暗い表情の想乃を気遣い、郷が明るい声を出した。
「僕、今日、姉ちゃんの友達に会ったよ? 男の人なんだけど。スーツを着た営業マン」
「……は?」
鶏皮を切る手が一瞬止まり、想乃は郷に怪訝な目を向けた。
「学校で、なんだけど。偶然仕事で来てるって言ってた」
「いやいやいや」
想乃は顔をしかめ、乾いた笑みを浮かべる。
「私、男友達なんていないけど」
大学を辞めてから同性の友達にさえ会わなくなった。遊びに誘われても、それに使う時間もお金もないため自然と友達というカテゴリーは離れていった。なのにましてや異性などと。あり得ないと思った。
「え、でも」と続け、郷は心もとない顔つきになる。
「無理言わないのー」
「そんなこと言って姉ちゃんだって本当は食べたいくせに」
「そりゃあね」と言って冷蔵庫から玉ねぎを出した。思わずふぅと嘆息をもらしてしまう。
「てか、姉ちゃん。お母さんの病院行ったの?」
「……うん」
「そっか。お母さん……やっぱ反応ない?」
「うん」
病院で立ち聞きしたことを思い出し、想乃は表情を暗くした。玉ねぎを洗いまな板の上でくし切りにする。あらかじめ二分の一で冷凍しておいたうすあげを、お湯に浸して油抜きをする。
「あ、そうだ!」
暗い表情の想乃を気遣い、郷が明るい声を出した。
「僕、今日、姉ちゃんの友達に会ったよ? 男の人なんだけど。スーツを着た営業マン」
「……は?」
鶏皮を切る手が一瞬止まり、想乃は郷に怪訝な目を向けた。
「学校で、なんだけど。偶然仕事で来てるって言ってた」
「いやいやいや」
想乃は顔をしかめ、乾いた笑みを浮かべる。
「私、男友達なんていないけど」
大学を辞めてから同性の友達にさえ会わなくなった。遊びに誘われても、それに使う時間もお金もないため自然と友達というカテゴリーは離れていった。なのにましてや異性などと。あり得ないと思った。
「え、でも」と続け、郷は心もとない顔つきになる。