Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

　店内に流れる有線放送、マニュアル通りに仕込まれた挨拶やセールストーク、バーコードを読み取る機械音にポイントカードの有無を尋ねるＡＩ音声。コンビニは今日も様々な音で溢れている。

　商品の品出しやカウンターフーズの管理に集中しながらも、来店ベルに反応して「いらっしゃいませ」と声を張り上げた。瞬間、想乃の丸い瞳が見開かれ、微かに揺らいだ。ドキドキと鼓動が早まる。

　スイーツプリンスだ。俯きがちに密かにはにかんだ。今朝見つけたおでこのにきびが隠れるよう、前髪をささっと手櫛で整える。

　スーツ姿の彼はデザートの並んだオープンケースへ向かい、今日は何を買っていこうかと顎に手を当てながら思案している。

　想乃は電気フライヤーにセットした揚げ物の個数と時間帯を専用のノートに書き記しながら、妙にふわふわとして落ち着かない気持ちを小さく深呼吸することでやり過ごした。

　スイーツプリンスに会えると少しだけ気持ちが上向きになる。彼が来店するとそれだけで心が躍った。購入するデザートが決まり、彼がそれをレジへと運ぶ。

　ちょうどすいている時間帯で良かった。いらっしゃいませ、と軽くお辞儀をしながら胸を撫で下ろした。

　バーコードスキャナを掴み、赤い光線を当てて彼が選んだ商品を読み取る。