Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

 ***

 翌々日の朝。毎日のルーティンのごとく、想乃がふたり分の弁当を詰めていると、郷がスマホを見たままリビングの戸を開けた。

「おはよう」と挨拶をするが、「うん」と生返事のみが返ってくる。郷はスマホ画面を見つめて神妙な顔つきをしていた。「どうしたの」と想乃は声をかけた。反応が得られないので、再び「郷?」と名前を呼んだ。

「え、なに?」

 郷は少し慌てた様子で顔を上げる。

「スマホ見て固まってるから。なにか気になることでもあった? メール?」
「……ああ、いや、なんでもない。ちょっとネットニュース見てただけ」
「ネットニュース。郷が……?」

 珍しい、と言わんばかりの顔をすると「うっさいなぁ」と反論される。

「姉ちゃん今日パンは?」
「うん、焼いてー。食べてく」
「了解」

 朝食に郷が焼いてくれた食パンを食べる。コーヒーに口をつけ、うっかり欠伸がもれた。このところ気掛かりなことが多すぎて心身ともに疲れが溜まっていた。ストレスから夜も熟睡できていない。

 ぼんやりしていると、通学するために郷が学ランを羽織って玄関へ向かった。「いってらっしゃい」と見送り、挙げた手がふと空中で止まる。

 ネットニュースか。そういえば最近見ていないかも。
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