Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 リビングに戻り、奥にあるソファーに移動した。正面にガラス製のローテーブルとテレビが置いてあり、部屋の隅には何もないスペースが広がっている。

 目をスマホの画面に向けながら座った。未来人を(かた)るメールで災害を予知されていたころはたびたびチェックをしたものだが。このところそういった内容が届かないので見ていない。否、見る余裕がないと言ったほうが正しいのかもしれない。

 半分に減ったマグカップのコーヒーを飲みつつスマホ画面をスクロールする。上から順に記事の見出しを流し読み、ふと指が止まった。

『区立八木沢中学校の男子生徒ら三人、家裁へ送致か』

 中学校の名称は郷が二学期に転校したばかりの公立中学だ。そこの生徒が何かしらの犯罪行為を?

 想乃は怪訝に眉を寄せ、見出しをタップする。

 内容としては少年A、少年B、少年Cらが同学年の少年をいじめていたというものだ。悪口やちょっとした嫌がらせに留まらず、日常的な暴力や暴行が繰り返されていたと書いてある。

 こんな大変ないじめがあるなんて……。郷は大丈夫なの?

 ふとそう思い至ったところで、ここ数日の郷が怪我をしていたと気づく。途端に胸がざわついた。
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