Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃は取り繕うようにぶんぶんと首を振った。

 スイーツプリンスだ……っ! なんで!?

 うっかり汚水をかけた相手が推しのスイーツプリンスだなんて、自分はどこまでついてないんだろう。

 想乃は目に涙を溜めたまま「あ、あの」と言葉をどもらせた。

「きみ、確かコンビニでも働いてたよね? 名前はええと……、浅倉さん、だったかな?」
「……っは、はい」

 想乃は背筋をしゃんと伸ばし「申し訳ありませんでした」と再三頭を下げた。

「あ、あの。スーツ……お詫び、」

 推しに迷惑をかけてしまった恐怖から身がすくむ。自分がおかした過ちに、ちゃんと責任を取るべきだ。推しだからこそなおさら。

「お、お詫びにクリーニング代を出させてください」
「うーん……そうだな。お詫びって言うんなら、今度食事にでも付き合ってもらおうかな?」
「……え。は、はい?」

 呆気に取られて目を瞬いた拍子に、想乃の瞳からポロリと涙がこぼれ落ちる。

「なんてね?」

 彼はふふっ、と口元に手を当てて柔和に微笑んだ。クスクスと肩を揺らしながら笑い「大丈夫だよ、これぐらい」と首を傾げている。

「浅倉さんって大袈裟だね」
「……え」
「それよりきみは? ちゃんと休めてる? この間より疲れてそうだけど?」
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