Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜

「実は。明日はお休みを取っているんです」
「へぇ？」

　ハンドルを握りながら、並樹が驚いたように横目を向ける。

「前に。並樹さんから体調を気遣われて、明日の土曜日は一日フリーにしました。なので、明日でも大丈夫です」
「……そっか」

　車が一旦、赤信号で停まり、並樹が想乃を見つめて嬉しそうに言った。

「じゃあ、明日の午後から俺に時間をもらえる？　一時でも二時でも三時でもいいから、浅倉さんの都合で決めよう」
「あ。じゃあ一時で……」
「ははっ、起きた都合でいいよ。無理させたくないし、今日ももう遅いしね」

　想乃は目をぱちりと見開き、しかと彼の笑みを焼き付けた。運転席と助手席の近さもそうだが、片想いの彼とふたりきりというこのミラクルな展開に、ずっと心音が高鳴っている。ドキドキと打つ鼓動が騒がしい。

「とりあえず。明日起きたら連絡してくれる？　ラインで構わないから」
「……わかりました」

　自宅の門扉前で静かに停車して、シートベルトを外した。「あ」と並樹が思い出したように言う。

「言い忘れていたけど。今日話した依頼については他言無用で頼むね？　弟の郷くんにも言っちゃいけないよ？」
「え。郷にも？」

　驚く想乃を見て、並樹は「そっ」となんでもないふうに頷く。