Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
眉を八の字に寄せて次のページを捲ろうとすると、そこで並樹がメニューを押さえた。え、と顔を上げる。「食べたいのあったんじゃないの?」とじっと目を見つめられる。「えぇと」。動揺から声が上ずった。
「うーん。もしかして、なんだけど……値段とか気にしてる?」
「……あ」
図星を指されて口ごもる。ハァ、と並樹が大仰なため息を吐き出した。
「なんだか心外だなぁ」
「え……」
「まさかまた自分で出そうとか思ってる?」
「え、えぇと。あの」
並樹にどう言っていいかわからず、言い淀んだ。自分が食べるものは自分で払うのが当たり前だし、お金のことはいちいち口に出したくない。品格のなさを見抜かれるのは恥だ。
想乃は目を伏せた。瞳をきょろきょろと泳がせる。
「自分のものを自分で払うのは、当然のことです」
「うん。そうだね」
「でもそこまで手持ちがないのも、現状で……」
「浅倉さんは時間で払ってくれてるじゃない」
「……え?」
「浅倉さん、昨日依頼を引き受けるって言ってくれたよね?」
「えと。はい」
「ということは、もうすでに俺との契約は始まってるんだよ。つまり俺の婚約者という立場なわけ」
「……は、はい」
「恋人であり婚約者であるきみに食事をさせられないほど、俺は甲斐性なしに見える?」
「っい、いいえ、そんな。そういう意味ではっ」
「うーん。もしかして、なんだけど……値段とか気にしてる?」
「……あ」
図星を指されて口ごもる。ハァ、と並樹が大仰なため息を吐き出した。
「なんだか心外だなぁ」
「え……」
「まさかまた自分で出そうとか思ってる?」
「え、えぇと。あの」
並樹にどう言っていいかわからず、言い淀んだ。自分が食べるものは自分で払うのが当たり前だし、お金のことはいちいち口に出したくない。品格のなさを見抜かれるのは恥だ。
想乃は目を伏せた。瞳をきょろきょろと泳がせる。
「自分のものを自分で払うのは、当然のことです」
「うん。そうだね」
「でもそこまで手持ちがないのも、現状で……」
「浅倉さんは時間で払ってくれてるじゃない」
「……え?」
「浅倉さん、昨日依頼を引き受けるって言ってくれたよね?」
「えと。はい」
「ということは、もうすでに俺との契約は始まってるんだよ。つまり俺の婚約者という立場なわけ」
「……は、はい」
「恋人であり婚約者であるきみに食事をさせられないほど、俺は甲斐性なしに見える?」
「っい、いいえ、そんな。そういう意味ではっ」