Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
話す、というのは依頼に関する取り決めだろう。彼は昨夜、契約書を用意すると言っていた。
想乃はみずみずしい野菜とローストビーフを味わいながら、時おり彼を盗み見る。目が合うと微笑まれ、想乃もつられて笑みを浮かべる。
恋人同士。周囲から見たらちゃんとそう見えているのだろう。実際は彼氏などできたことがないので、並樹を見ては鼓動が高鳴り物憂い吐息が浮かんだ。男性に対する免疫というものが皆無だった。
「それじゃあ契約についての話をしようか」
それまで並樹が身につけていたボディバッグの中からタブレット端末を取り出した。
「ここから先はビジネスの話になるから、少しシビアなことも言うよ?」
「……え」
彼の真剣な瞳を見て緊張が走る。はい、と返事をする声がいくらか上ずった。
「今日から一年間、浅倉さんに婚約者のふりをしてもらう。給料は月給制でこのぐらいだと考えている」
そこで並樹からタブレットの画面を見せられた。想乃はそこに書かれた数字を見つめ息をのんだ。
「え、お給料が発生するんですか?」
「そうだよ? あくまでも仕事だからね。きみには今日みたいに度々時間を空けてもらう」
「わかりました」
現状、休みなくフルで働いてもこの金額には達しないので正直ありがたくもあり申し訳なくもなる。
想乃はみずみずしい野菜とローストビーフを味わいながら、時おり彼を盗み見る。目が合うと微笑まれ、想乃もつられて笑みを浮かべる。
恋人同士。周囲から見たらちゃんとそう見えているのだろう。実際は彼氏などできたことがないので、並樹を見ては鼓動が高鳴り物憂い吐息が浮かんだ。男性に対する免疫というものが皆無だった。
「それじゃあ契約についての話をしようか」
それまで並樹が身につけていたボディバッグの中からタブレット端末を取り出した。
「ここから先はビジネスの話になるから、少しシビアなことも言うよ?」
「……え」
彼の真剣な瞳を見て緊張が走る。はい、と返事をする声がいくらか上ずった。
「今日から一年間、浅倉さんに婚約者のふりをしてもらう。給料は月給制でこのぐらいだと考えている」
そこで並樹からタブレットの画面を見せられた。想乃はそこに書かれた数字を見つめ息をのんだ。
「え、お給料が発生するんですか?」
「そうだよ? あくまでも仕事だからね。きみには今日みたいに度々時間を空けてもらう」
「わかりました」
現状、休みなくフルで働いてもこの金額には達しないので正直ありがたくもあり申し訳なくもなる。