Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
【7.スキンシップについては恋人らしく振る舞うことを定義とし「手を繋ぐ」「寄り添う」を最低限度とする。ただし、甲が「抱擁」を要すると判断した場合は臨機応変に対応すること】
抱擁。つまりはハグをするという意味だ。一瞬頭の中で想像してしまい、想乃はきゅっと唇を結んだ。本当にそんなことができるだろうか。手を繋ぐ、寄り添う、でさえ難関なのに。恥ずかしいことこの上ない。
契約書の半分を読んだところで第四条と続き、仕事に関する内容が書かれていた。
【第四条 乙が現在従事しているパートタイム労働については、ただちに退職願いを提出し、辞めるものとする。ただし、事業主との雇用契約を鑑みて、この猶予を一ヶ月とする】
「えっ」と声がもれた。「辞めるって」。想乃はうろたえた。自分の読み間違いかと思い、文頭から再度読み直す。確かに“辞める”と書いてある。
「私、辞めなければいけないんですか? 今のコンビニと清掃業」
「……うん。今現在頑張っている浅倉さんに対して失礼を承知で言うけれど。婚約者という立場上、アルバイトを掛け持ちするフリーターというのでは都合が悪いんだ。いずれは並樹家の人間になるという設定だから……便宜上学生に従事しているのが好ましいんだけど」
抱擁。つまりはハグをするという意味だ。一瞬頭の中で想像してしまい、想乃はきゅっと唇を結んだ。本当にそんなことができるだろうか。手を繋ぐ、寄り添う、でさえ難関なのに。恥ずかしいことこの上ない。
契約書の半分を読んだところで第四条と続き、仕事に関する内容が書かれていた。
【第四条 乙が現在従事しているパートタイム労働については、ただちに退職願いを提出し、辞めるものとする。ただし、事業主との雇用契約を鑑みて、この猶予を一ヶ月とする】
「えっ」と声がもれた。「辞めるって」。想乃はうろたえた。自分の読み間違いかと思い、文頭から再度読み直す。確かに“辞める”と書いてある。
「私、辞めなければいけないんですか? 今のコンビニと清掃業」
「……うん。今現在頑張っている浅倉さんに対して失礼を承知で言うけれど。婚約者という立場上、アルバイトを掛け持ちするフリーターというのでは都合が悪いんだ。いずれは並樹家の人間になるという設定だから……便宜上学生に従事しているのが好ましいんだけど」