Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
 想乃の丸い瞳が揺らいだ。目を赤くする想乃を見て、並樹が動揺をあらわにする。

「違うよ、そういう意味で言ったんじゃないから」

 手を振って懸命に否定する彼を見て、想乃は八の字眉毛のままで小首を傾げる。

 並樹は嘆息をもらし襟足を隠すように首元を押さえた。どう言ったらいいか思案しているようだ。

「わかった。正直に話すよ」

 困ったままの彼の瞳が想乃を見つめた。

「実はきみのピアノを聴いたことがある」
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