Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
「俺の……亡くなった母親がピアノを弾いていた」
え、と声が強張る。なんて言ったらいいか言葉が続かなかった。
昨夜、姉夫婦が父親と同居をしていると聞かされて、てっきり両親ともに健在だと思い込んでいた。
「母本人は趣味程度で技術とか全然って笑ってたけど……俺は母親の弾くピアノが大好きだった。父も一緒だよ。だから、浅倉さんのピアノを聴いたらきっと気にいるんじゃないかと思って」
並樹はそこで息をついた。テーブルに置いたままのアイスコーヒーに口を付け、また想乃を見つめる。
「話を戻すけれど。浅倉さんにはピアノを弾く技術と才能がある。それを仕事に活かさないのはもったいないと思う」
「……でも。もう今さらで、どうしようも」
「今は全然弾いてないの?」
「……はい。自宅にあったピアノも急遽お金が必要になって、売ってしまったので」
「そっか」
「それに大学は辞めてしまったし。もうピアノに関わることも」
「大卒じゃなくても他にやりようはあるでしょ。受けようと思えばピアノ検定だって受けられるし。資格を必要とする業種なら取ればいい。浅倉さんに熱意があるのなら、まだまだこれから……何にでも挑戦していいんだよ?」
え、と声が強張る。なんて言ったらいいか言葉が続かなかった。
昨夜、姉夫婦が父親と同居をしていると聞かされて、てっきり両親ともに健在だと思い込んでいた。
「母本人は趣味程度で技術とか全然って笑ってたけど……俺は母親の弾くピアノが大好きだった。父も一緒だよ。だから、浅倉さんのピアノを聴いたらきっと気にいるんじゃないかと思って」
並樹はそこで息をついた。テーブルに置いたままのアイスコーヒーに口を付け、また想乃を見つめる。
「話を戻すけれど。浅倉さんにはピアノを弾く技術と才能がある。それを仕事に活かさないのはもったいないと思う」
「……でも。もう今さらで、どうしようも」
「今は全然弾いてないの?」
「……はい。自宅にあったピアノも急遽お金が必要になって、売ってしまったので」
「そっか」
「それに大学は辞めてしまったし。もうピアノに関わることも」
「大卒じゃなくても他にやりようはあるでしょ。受けようと思えばピアノ検定だって受けられるし。資格を必要とする業種なら取ればいい。浅倉さんに熱意があるのなら、まだまだこれから……何にでも挑戦していいんだよ?」