Deception〜私たちの恋の裏にはそれぞれの思惑が渦巻いている〜
不意に並樹が片手を上げた。ホールにいた男性の店員が気づき、そばに寄る。デザートの注文かなと思い、想乃はいくらか口元を緩めた。
「すみません、予約のときにチラッと話しているのですが。二階のピアノ、弾かせていただいても?」
「かしこまりました。ご案内いたします」
え。
ドキンと心臓が跳ねる。
ピアノ? 今ピアノって言った?
まさか今ここで弾いてみせてってこと? 店内には他にたくさんのお客さんもいるし、三ヶ月のブランクだってあるのに。
並樹が席を立ち、想乃のほうへ回った。若干心もとなさそうに彼を見上げると、「大丈夫」と言って微笑を向けられた。スッと手を差し出されるのでおずおずと右手を上げる。彼の手に指先が触れて立ち上がった。途端に心拍が騒がしくなる。
「きみは弾けるよ。あのころのように」
想乃は頼りなく目を上げて並樹を見つめ返した。彼の瞳に信頼の色が見える。彼に繋がれていないほうの手をグッと握り締める。心臓部に当てて深く呼吸する。
「やってみます」と言い、こくりと頷いた。
「ではご案内いたします」
「すみません、予約のときにチラッと話しているのですが。二階のピアノ、弾かせていただいても?」
「かしこまりました。ご案内いたします」
え。
ドキンと心臓が跳ねる。
ピアノ? 今ピアノって言った?
まさか今ここで弾いてみせてってこと? 店内には他にたくさんのお客さんもいるし、三ヶ月のブランクだってあるのに。
並樹が席を立ち、想乃のほうへ回った。若干心もとなさそうに彼を見上げると、「大丈夫」と言って微笑を向けられた。スッと手を差し出されるのでおずおずと右手を上げる。彼の手に指先が触れて立ち上がった。途端に心拍が騒がしくなる。
「きみは弾けるよ。あのころのように」
想乃は頼りなく目を上げて並樹を見つめ返した。彼の瞳に信頼の色が見える。彼に繋がれていないほうの手をグッと握り締める。心臓部に当てて深く呼吸する。
「やってみます」と言い、こくりと頷いた。
「ではご案内いたします」